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膵臓がんの手術療法

  • [公開日]2017.10.13
  • [最終更新日]2019.03.22

目次

手術(外科治療)

手術は最も治療効果の高い治療法です。手術法には、膵頭十二指腸切除、膵体尾部切除、膵全摘術があり、切除する範囲はがんの位置や広がり方によって決められます。

手術が適応になるのは、すい臓周囲の動脈やほかの臓器への転移腹膜播種(ふくまくはしゅ/お腹の中にがんが種をまいたように広がっている状態)がなく、手術に耐えられる体力がある場合です。がんとすい臓の一部か全部、周囲の臓器を取り除き、完治を目指します。

すい臓がんの手術法には、膵頭十二指腸切除、膵体尾部切除、膵全摘術の3種類があります。どの手術法を選ぶかは、がんのできた場所によって決まります。診断法の進歩によって最近では少なくなってきましたが、開腹してみたら検査ではわからなかった小さな転移が広がっていて、すい臓やがんを切除せずにそのまま手術が終了するケースもあります。

●膵頭部のがん

がんが膵頭部にあるときには、膵頭部とその周囲のリンパ節、十二指腸、胆のう、胆管を取り除く膵頭十二指腸切除を行います。膵頭部は十二指腸、胆管とつながっているため、すい臓だけではなく、これらの臓器をひとかたまりとして切除する必要があります。がんの発生した場所や広がり方によっては、胃の一部も切除します。

この膵頭十二指腸切除では、小腸(空腸)と残った胆管、すい臓、胃をつないで、食べ物と膵液、胆汁の通り道を再建します。大がかりな手術で、再建手術まで含めると6~8時間かかります。

また、すい臓の裏には肝臓に栄養を送る門脈という太い血管が走っています。その血管までがんが広がっていたときには、門脈の一部と膵頭部を一緒に切除し、血管をつなぎ直す門脈合併切除・再建を行うこともあります。

●膵体部・膵尾部のがん

がんが膵体部、膵尾部にあるときには、膵頭部のみ残してすい臓とその周囲のリンパ節を切除する膵体尾部切除を行います。一般的に、脾臓も一緒に取り除きます。

がんの大きさや場所によっては、膵尾部とその周囲のリンパ節のみ切除する場合もあります。この膵体尾部切除では膵頭十二指腸切除のような再建手術の必要はありません。手術は通常、4~5時間程度で終了します。

●膵全摘術

がんがすい臓全体に広がっている場合には、すい臓全部と十二指腸、胆管、胆のうを切除する全摘手術が行われます。全摘手術の対象だから深刻な状況というわけではなく、がんの位置として全摘せざるを得ないだけで、治癒する可能性の高い人に適した手術法です。

すい臓と十二指腸、胆管の一部を切除した後は、小腸と残った胆管、胃をつないで、食べ物と胆汁の通り道を再建します。

●手術の合併症

すい臓がんの手術の合併症で最も怖いのは、縫い合わせたところから膵液がお腹の中に漏れる膵液瘻(すいえきろう)と、再建した消化管から胆汁が漏れる胆汁瘻(たんじゅうろう)です。膵液瘻、胆汁瘻が起こると発熱、腹痛といった症状が出ます。多くの場合は、しばらく絶食すれば回復しますが、腹腔内出血を起こすこともある危険な合併症です。

すい臓がんの手術は高度な手術であり、症例数が多い病院で治療を受けたほうが、合併症を起こすリスクは低くなります。日本肝胆膵外科学会ホームページでは、すい臓がん手術などの症例数が多い高度技能専門医認定修練施設を公開しています。

都道府県別に修練施設を検索できますので、手術ができるかどうかの判断やセカンドオピニオンも修練施設で受けるようにしましょう。

●術後の膵酵素補充と糖尿病対策

特に膵頭十二指腸切除を受けると、胃の動きが悪くなるために、食後に胃もたれを起こし食欲減退を生じやすくなります。脂肪吸収力が弱まるので、下痢をしやすくなることもあります。膵頭十二指腸切除や膵全摘術を受けたとき、膵体尾部切除でも食欲不振がみられるときには、膵消化酵素補充薬パンクレリパーゼを服用することが重要です。

一度にたくさん食べられなければ、食事の回数を増やし少しずつ食べるようにするとよいでしょう。前述のようにすい臓は血糖値を調整する役割も果たしています。膵全摘術を受けた場合や糖尿病が悪化したときには、インスリンの投与が必要です。

本コンテンツは認定NPO法人キャンサーネットジャパンが2017年10月に出版した「もっと知ってほしい膵臓がんのこと」より抜粋・転記しております。

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