膵臓がんの検査と診断
すい臓がんかどうかは、腹部超音波検査、CT、MRI、MRCPなどの画像検査で調べます。確定診断には、ERCP、腹部超音波検査、CTを使って膵液の細胞やすい臓の組織を取り、顕微鏡でみる病理診断が重要です。すい臓がんが疑われるときには、まず、血液検査と腹部超音波検査を行います。
血液検査では、血液中のアミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼ1といった膵酵素と、腫瘍マーカーCA19-9、CEA、DUPAN-2、SPan-1などの数値が上昇していないかを調べます。腹部超音波検査は、腹部に超音波を発信するプローブを当て、そこから返ってくるエコー(反射波)をコンピュータで画像化します。
これらの検査で異常があれば、CT(コンピュータ断層撮影)検査あるいはMRI(磁気共鳴画像)検査かMRCP(磁気共鳴胆管膵管撮影)検査で病変の有無や広がりを詳しく調べます。MRCPは磁気とコンピュータを利用して、膵管、胆管、胆のうの断面を撮影する検査です。
さらに必要に応じて、超音波装置のついた内視鏡を口から十二指腸へ入れ、すい臓を観察するEUS(超音波内視鏡検査)、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)、PET(陽電子放射断層撮影)検査を行います。ERCPは、内視鏡を使って膵管に造影剤を注入しX線撮影を行う検査です。PET検査では、ブドウ糖液を注射し、がん細胞の有無と分布をみます。
確定診断のためには、ERP(内視鏡的逆行性膵管造影)、EUS、腹部超音波検査、CTのどれかを使って、病変の組織か細胞を採取(生検)し、それを顕微鏡でみる病理診断(細胞診・組織診)が必要です。切除可能な段階かどうか、画像検査や生検だけでは判断がつかないときには、腹部に4~5か所小さな穴を開けてカメラとメスがついた腹腔鏡を入れ、病変部分を切除して病理診断を行います。
膵臓がんのステージ(病期)
すい臓がんの進行度を表す病期は、がんの大きさや広がり、リンパ節や血管、ほかの臓器への転移の有無によって0期~Ⅳb期の6段階に分類されます。病期を知ることは治療方針を立てるために重要です。すい臓がんは上皮内細胞の中で発生し、細胞の壁を突き破って膵管、すい臓の外へ広がっていきます。
病期(ステージ)とは、がんの進行度を表す指標です。すい臓がんの病期は、がんの広がり、リンパ節やほかの臓器への転移の有無によって、0期、Ⅰ期、Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳa期、Ⅳb期の6段階に分けられます。数字が大きくなるにしたがってがんが進行していることを示します。
0期は上皮内細胞の中にがんがとどまった非浸潤がんで、上皮内がんとも呼ばれます。Ⅰ期以降は上皮内細胞より外へがんが広がった浸潤がんで、Ⅳa期、Ⅳb期はすい臓に隣接した主要な血管、あるいは周囲のリンパ節やほかの臓器に転移のある状態です。
すい臓がんでは0期の段階でみつかるケースは極めてまれですが、画像診断の進歩や早期発見を目指す研究の成果で、非浸潤がんがみつかるようになってきました。
日本膵癌学会の「膵癌登録報告2007」によると、すい臓がんの人の病期の内訳は、0期~Ⅲ期までが約20%、半分以上の人はリンパ節やほかの臓器に転移のある状態でみつかっています。ただ、治療法の進歩によって、ほかの臓器へ転移がある人の治療成績は徐々に改善しています。
本コンテンツは認定NPO法人キャンサーネットジャパンが2017年10月に出版した「もっと知ってほしい膵臓がんのこと」より抜粋・転記しております。