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【オンコロな人対談】株式会社インテリム顧問 西條 長宏先生(日本臨床腫瘍学会 特別顧問)・浮田 哲州社長(株式会社インテリム代表取締役)~後編~

  • [公開日]2017.02.23
  • [最終更新日]2017.03.13

オンコロのがん用語辞典作成に協力を頂いている、インテリム社の浮田 哲州社長と同社顧問で日本臨床腫瘍学会 特別顧問の西條 長宏先生との対談です。中編ではグローバルで戦っていくための学びの大切さを伺いました。後編は今後のがん医療についてお話いただきます。

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F:今後のがん治療薬の開発についてそれぞれのお考えをお聞かせ下さい。

浮田社長: よくクライアントと話をする中で、高薬価の問題などがクローズアップされてきています。そのことで現状として製薬メーカーの戦略が刻々と変わっていると思います。

今、全体的な傾向として分子標的治療などは、効けば勝ちという感じになってきているのでPhaseⅠで効けばPhaseⅡを飛ばしていきなりPhaseⅢというスタイルの治験になってきているようです。そうなると計画を必然的に変えなければならないという話も聞いています。とにかく、今起きている状況としてはCRO、製薬メーカーも含めて開発に関わるリソースが減っている事、更に人口自体も減少傾向にあるので、開発する側にとっては需給バランスが良くない状況になっているのは確かです。そこにどれだけ応えられるかという事と国内だけではなくアジア、グローバルへの対応が求められてきているという事を強く感じます。従ってその点についてはスピーディーに対応しないといけないと思っています。

Fオンコロジーについては各社同じような人材を求めている傾向にあると思うが、優秀な人材について枯渇感を感じるところはありますか?

浮田社長: そうですね。オンコロジーに関しては日本でも治験がどんどん走っているという事もありますが、我々は他のアンメットな領域の案件についてのオファーも頂きます。また、最近は次の柱として再生医療をターゲットとしています。実際その実績も我々は持っていますし、再生医療ですと各アカデミアからのオファーや、海外からのオーダーも非常に増えてきているのが現状です。

また、全体的に日本で新薬が承認されるスピードが速くなってきていますが、そこで一番必要となってくるのはグローバルPMだと思っています。我々は今年からグローバルPMとして外国人のPMに日本で働いてもらうという計画を進めています。

西條先生: オンコロジーの開発で今までで大きく変わってきた点としては、これまではハザード比0.7くらいを求めて上乗せ効果を見るという事を力仕事的にやってきた感がありますね。 ただ、先ほどご指摘があったように分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害剤の出現によって臨床試験の形がずいぶんかわってきたと思います。それにうまくキャッチアップしていく事は重要ですね。また、グローバル試験で日本が症例数で15%~20%加担して薬剤の承認を取るというやり方はごく普通になってきていますが、それは我々の頃にはあまりなかったことです。

また、もう一つ重要な点としてアカデミアの作ったシーズや製薬メーカーが実際にやらないような臨床試験、たとえば稀少がんに対するトライアルなどですが、そのような試験をアカデミアで治験としてやるようになってきました。しかし、実際それをやるには国立がん研究センターにしても大学病院にしてもパワーが少ないと思います。
結果、それをアウトソーシングしなければならなくなりますので、それに対して対応する必要がオンコロジー領域では非常に増えてきているという気がします。

F:浮田社長、インテリムは国内外を問わず様々な会社と業務提携や協業をされています。昨年もがん情報サイト「オンコロ」を運営するクリニカル・トライアル社やAIを用いたコールセンター事業を展開しているU-NEXTマーケティングとの協業を発表しましたが、その辺りについてお聞かせ下さい。

浮田社長: 最近、いろいろな方面から「インテリムの提案は奇抜だよね、斬新だよね、おもしろいよね」という言葉を頂きます。ただ、やはり全てを我々独自でやることはいろいろな意味で難しいと思いますので業務提携や協業も行っています。その中でここ数年の私のポリシー、価値観として、一緒に組んである程度新しい価値観を創造できる相手なのか、スピード重視でいろんなものを立ち上げられるかというところを一番に考えています。オンコロさんもコンテンツとしての歴史はまだ浅いとは思いますがある程度の認知度は高まってきていると思います。例えば家族や知人でがんになったときにまず調べるのは、ほとんど皆さんインターネットによる検索ではないか思いますが、検索してもほとんどまともな正しい情報があがってこないのが現状かと思います。これは日本だけではなくアジアなど海外でも同じ状況だと思います。

そして結局は患者さんが個人的にブログで情報発信するところに行きついているのではないでしょうか。今回、オンコロさんとコラボすることによってその辺はうまく相互補完ができるのではないかなと思っています。次に、U-NEXTマーケティングのAIを使ったメディカルコールセンター事業についてですが、我々もフルパッケージでコールセンターの業務も請け負うこともあります。ただ、それは、ウィークデーのビジネスアワーオンリーになりますので、結局、18時以降、や土日、祝日、そして24時間の対応などになると同業他社に依頼する事となります。それが競合他社の子会社であったりするとコンプライアンス的にその情報が競合グループで全部共有されて、インテリムがあそこの会社の治験をやっているとか、とんでもないことが判明した事もありました(笑)。

あと、コールセンター業務を行っている会社は何社かありますがCRO、医薬品開発の周辺業務でいろいろ考えますと一番サービスに対するイノベーションが起こっていない領域ではないかと思います。プレーヤーが限られており価格競争が一切起こっていないので価格設定が高くなっている訳ですね。そこで、各クライアントに聞いてみると、「ようやくAIを使ったお客様相談室の話をしだしたのですよ」とか言われたりします(笑)。本当、最近では新聞を見ているとほぼ毎日AIというキーワードが出ています。実際のところ、昨年12月に協業のニュースリリースを出しましたが、リリース後、1ヶ月少しで既にいくつか受注をもらっている状況です。実は今朝も大阪のクライアントに行って話してきたのですが、「ものすごく興味があるので是非プロポーズして欲しい」と言われてきたばかりです。

結局、我々が企画する場合はコストメリットだけでなくイノベーションも提供しなければなりません。従ってこのAIのシステムを使ってどのような新サービスを提供できるのかという事を考える必要がありました。そこでいろいろフィジビリティ調査をするなかで、誰でも知っているようなビジネスモデルであるが、全く革新的なサービスが起きていない分野がコールセンタービジネスでした。従って、この分野に参入するのであれば、その点をひっくり返すぐらいの気持ちでやろうと思っています。

また、新規事業に関してですが、基本的に私が責任者をやります。そして、各クライアントに話に行くと「また面白い提案を投げにきたのか」という期待も持たれる事が多いですね (笑)。私自身が製薬業界に直接関与せず会社を立ち上げましたので、業界の慣習や価値観といった観念というものを無視していろいろ考えます。その辺りがクライアントの方々に興味を持たれている点なのかなと思いますね。

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F:西條先生が冒頭にお話しされたように、インテリムは業界の方が立ち上げられたCROではないのでまさにとらわれない発想が出来て結果的に医療に貢献するような新規事業が生み出されているということですね。今、浮田社長から話が出ましたがん臨床試験の被験者募集と患者さんの関係について、また、医薬業界においてAIを用いたコールセンター事業について、今後の展望などがございましたらご意見を頂戴できればと思います。

西條先生: 私が臨床試験を行っていた時代は臨床試験に対するアレルギーが強くメディアはもちろん厚生労働省ですら臨床試験と声高に言うことが憚れるような風潮がありました。臨床試験に対する社会の理解や、メディアの風向きも変わってきたのでそれとのコミュニケーションをいかにうまくやるかということがCRO、メーカー、学会、研究者にとって非常に重要だと思います。手前みそになりますが日本臨床腫瘍学会の寄与も大きいと思っています。従ってオンコロさんと上手く提携して、学会も専門医だけを教育し認定するのではなく一般の方々が臨床試験についてどうコントリビュートすべきか、などに対するエデュケーションをやっていく事を期待します。実際米国でもがん患者のうち臨床試験に入るのは3%程度にすぎないといわれています。学会などでもAIを用いたコールセンターと提携しているところがあります。また外国からこのような業務の依頼もあることから必須のActivityと思います。

F:では、最後に一言ずつお願いします。

浮田社長: 先ほども話しましたが日本自体の労働人口が減っていっているので、CROビジネスがリソースオリエンテッドなビジネスモデル、モニターがいなければ治験が走らないというものになってきています。ただ、今後はリモートモニタリングやRBMなどの標準化が加速され、ビジットも効率よくなってくると、日本のサイズで1000人以上のモニターは必要なくなってくるのではないかと思います。インテリムは現在、100名強のモニターが在籍していますが、将来的にもピークで300人ぐらいかなと考えています。やはりリソースで機会損失するというのは各社BIG issueになっていますので私のマインドとしてはリソースに頼らないようなビジネスモデルを構築していかなければならないと思っています。そのあたりはCROビジネスを再定義する部分も当然出てくるかなと思っていますので常に隙間は無いかなと思いやっていきたいと思います。

あと、インテリムが目指しているのは「アジアで最も卓越したCRO」ですが今、アジア発、日本発のグローバルCROが1社もないのが現状です。インテリムはそのポジションを目指していこうと思います。ただ、それは規模や売り上げではなくアメリカ、EU、アジアにおいて「インテリムに頼むのが一番安心だよね」というイメージ、安心感を植え付けたいというものです。そのためにもグローバルな人材を増やしていきたいと考えています。日本人は海外を見ていないからか平和ボケしている部分が多いと思います。中途半端に資源もあり土地もある程度広いので台湾や韓国の人たちと比べるとハングリー精神や外に出ていこうという部分が非常に少ないので気付いた時にはもう取り残されていると思います。そうような事も発信しながら内需だけではなく、外需も取り入れて勝ち残れるよう、生き残れるようにしなければならないと思っています。

西條先生: まず、浮田社長は発想がユニークで教えられることが多いと思いますね。今後、インテリムからMSL、MRとして派遣される方、あるいはインテリムから教育を受けられる方が私たちの持っている知識と同じぐらいまでのレベルまで到達して頂ければ一番ありがたいと思います。また、口頭試問のように個々で面接の様な形でディスカッションができるという事は我々にとっても興味あるかつ価値のある状況であると思います。臨床試験を取り巻く環境は新GCPが施行された1998年頃と比べると大きく変わってきました。何よりも国の方針が大転換し積極的に臨床試験を推進する方向性が明らかになったと思います。また医師主導臨床治験もようやく展開できる状況になっています。しかしそのためのリソースは限定されており苦戦を強いられている状況は変わりません。優れた新しい治療法をより効率よく患者に届けるため国、メディア、メーカー、CRO,研究者などが総力を挙げインフラ整備をダイナミックに行う必要があると思います。

F:本日はお二人とも、お忙しい中誠にありがとうございました。

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インテリムではオンコロジー領域を含めたアンメットニーズへの対応とアジア、欧米地域への進出のため、臨床開発モニターを積極的に募集しています。ご興味のある方はリクルートページをご覧ください。
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