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子宮頸がん体験者の夫 パフォーマンタロウさん

  • [公開日]2016.12.27
  • [最終更新日]2020.03.04

オンコロ体験談募集企画で送っていただいたパフォーマンタロウこと畑中太郎さんの記事です。畑中さんは2014年冬に子宮頸がんで奥様を亡くされ、それがきっかけでパフォーマンスをはじめられました。心が傷ついていたり、体が不自由な方に楽しんでもらいたいという想いで活動をされています。そんな畑中さんの体験談です。
パフォーマンタロウ様HP
http://performantarou.wixsite.com/performantarou

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現在、バルーンやパントマイム、不思議に見える水晶玉などを複合し、シャボン玉を使いストーリーを持った世界観を出せるようなパフォーマンスを、もっと身近に見せたい
素直なやさしい気持ち、心、わたしは決して忘れません
大切な人たちに出会えたのは、今の自分があるのは、「今が幸せ」と感じるのは、彼女のおかげです

パフォーマンタロウ

目次

「桜」来年も見れるかな

「桜、来年も見れるかな」

病院の庭で咲いている桜をしばらく立ち尽くし見て彼女はぽつりとつぶやいた
俺はがんばって微笑みながらそれは誰が見ても不自然な笑い方だっただろう

「奥さんは、子宮頸がんステージ4b、背骨にも転移しています。末期です。半年もつかわからない。」

突然の宣告は、ようやく寒い冬から暖かい春のはじまり。桜が咲きはじめた2013年4月でした。次の年も、桜を見て微笑みながら、泣いていたっけ。彼女は桜が大好きでした。食器も桜がたくさんかかれているものばかりだから桜を見ると、今でも苦しくなります。

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なんだそれ

2012年の11月頃。背中が痛いと言い出した。もともと、子宮が弱いようで、高校生の頃から、婦人科にちょくちょく通っていた彼女はいつものことだと思っていたでも12月は、いつもより痛みが長く続いた。それはいつもよりひどそうだったそれでも病院には、かたくなに行かなかった。恥ずかしいし、痛いから、、、

ようやく行ったのは2月の終わりだった。細胞検査などをして三月に結果が出た。それは、悪性。

「あくせい?」
なんだそれ、実感がない
癌なのかは、もっと調べないとわからないそう

「がん???」
なんだそれ

大きな病院を紹介され、検査、検査。
いきなり来て、こんな酷いのはみたことがない。と先生が言った。6.5センチの腫瘍がドーンと子宮にある。しかも、背骨と、けつ骨にも転移してた。取り除く手術はできないほどにおかされてるようだった。

「奥さんは、子宮頸がんステージ4b 背骨にも転移しています 末期です。半年もつかわからない」

なんだこれは。なんて声をかけていいのかわからない。というか。なにがなんだかよくわからない実感がわかなくて、夢か、現実かよくわからない。完全に混乱。

それから闘病が始まり、8ヶ月間 抗がん剤放射線治療をこなし、2013年12月、なんと奇跡的に癌が消えた!しかし、血液の中にわずかに残っていたらしく、1月に再発。

「やっと自転車に乗って買い物にいけたよー」と喜んでいた矢先だった。

それからは進行が早くて2度目の抗がん剤治療も効かず、体力だけが失われました。はじめに末期ですと言われた時、脳や肝臓、肺、心臓に転移する可能性があると言われていた。肝臓と脳と肺に転移した。

いろんな同意書を書かされた。それは、とてもサインしたくないものだった。腫瘍が破裂する恐れがある。万が一の場合、延命処置をするか、しないか。その処置をしても本当に一時的な延命、それをしたところで治るという見込みはもうなかった。その処置がまた酷い手術になると言っていた。聞いただけで恐ろしい。

“しない”

それは迷いない答えだった。息があるだけでもいいというのは、もはや自分のエゴにしか思えなかった。きっと、彼女が逆の立場だったら同じ決断をしただろう。

でも、わたしは、これにサインしなければいけないのか・・・答えは決まっていたけど本当に苦しい決断だった。

見つかってから半年も持たないと言われ2年、脳腫瘍になってから誕生日まではもたないと言われていたけど、2014年12月14日彼女の誕生日。彼女はがんばりました。
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彼女がいなくなってから

ふと、気づくと、ここはとても空虚な世界で
沢山仲間はいるけどひとりぼっち
そう強く感じる日々
こんなことが起きても世の中は変わらず動いていて、
また明日になって、
また次の日になって、
なんにも世の中は変わらない・・・

それでもこんな世の中を生きていかなきゃいけない
そう、こんな世の中だ
彼女がいなくなったときに感じた悲しみ
それとはまた違う哀しみを感じて虚しくなる

もういない
いないってなんだ?
死ぬってなんだ?
いきるってなんだ?
隣でいつも励ましてくれることもない

何のために、誰のために、こんなに頑張って仕事をしてるのだろうか
この頃は、どんな慰めの言葉も俺には届かなかった
「彼女のためにも、彼女の分も生きなきゃダメだ」
なんでそこまでして生きなきゃいけないの?

この言葉はわたしにとって苦痛そのものだった

ありがとうといえる幸せ
きっと自分がこの経験をしなければこの苦しみは想像でしかわからなかった
それは、想像よりもはるかに、ボロボロになった

いちいち一つ一つの言葉を拾い上げては、わざわざ傷つき、そんな卑屈な自分を責めまくり、もう嫌になる
人が目の前で息をひきとる

「なにこれ」

いないっていう意味すらよくわからなくて、頭の中はもうぐちゃぐちゃ
でも、、彼女は、もっともっと辛かっただろう
想像を遥かに越える、本人しかわからない肉体的な痛み
心の痛み、痛みで、心までも支配される苦しみ

俺にひどいことを言ってしまう自分をたくさんたくさん責めながら、
「ごめんね、ごめんね」
泣きながらいっていた
精神的な葛藤で苦しんで、心も体もほんとうにボロボロだったでしょう

脳腫瘍になる直前にこんなことを言いました

「あなたは、これからとてつもない悲しみにあうけど、それを乗り越えたとき、もっと優しい心の広い、いい男になれるからね。そして、私のことは気にせず、どうか幸せになってほしい。それが私の願い」

そんな言葉
それは、自分がいなくなることを認めたわけで、考えるだけで頭がおかしくなりそう

小さな何気ないあたりまえだとおもってしまうこと、通り過ぎてしまうことあなたのおかげで、たくさんのことに感謝できるようになりました。それは、あたりまえじゃないこと。だから、一つ一つの小さな幸せをこぼさないように。

これからもあなたを想うと泣くこともたくさんあると思う。たまには、許してね。でもね、大丈夫。おれは、今、心から幸せだ。

小さい幸せ=大きい幸せ
この人は心から、心の綺麗な人なんだなと感じたのは、脳腫瘍になった時
もう、わたしのこともわからなくなってしまっていたけれど
そんな姿を見れた時、わたしはこの人と結婚してほんとうによかったなと思いました

彼女と過ごした日々は私の人生でもあり、この経験は、
今後の人生を豊かにしてくれると思っています。

彼女が久しぶりに笑ったのは、数回しかできなかったジャグリング
「すごくこーゆうのあってるよ!」そう笑顔で言ってくれたこと、
私がどうして生きていけばいいかわからなくなった時に思い出した
没頭して現実逃避から始めたのが、パフォーマンタロウが誕生するきっかけでした

彼女が教えてくれたこと

おはよう
ありがとう
おやすみ

そう言えるって幸せ
小さいことだけど幸せ

小さい幸せ
大きな幸せ

彼女が身をもって
私に教えてくれたこと

彼女が、自分の経験で誰かの役に立ちたいって言っていたことを
私が広げていこうって思っています

子宮頸がんは毎年の検診で早期発見ができること
周りの人のためにも、どうか検診は受けてほしいです
早期発見なら治ることを知ってもらいたい
彼女の経験、自分の経験がひとりでもお役に立てるなら、彼女の本望だと思っています。
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