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T790変異を有する非小細胞肺がん AZD9291が良好な成績 WCLC2015

  • [公開日]2015.10.16
  • [最終更新日]2017.06.30

■この記事のポイント

・世界肺癌学会で、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるAZD9291の日本人を含む第2相試験結果が発表された。

・全体の71%は腫瘍が一定上縮小。安全性面も許容される範囲。ただし、引き続きフォローアップは必要。

・日本肺癌学会と肺がん患者会と連名でAZD9291の早期承認の要望書を厚労省に提出している。


ゲフィチニブ(商品名イレッサ)やエルロチニブ(商品名タルセバ)のような上皮細胞増殖因子受容体の分子標的治療薬(以下、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬)による治療においてがんの悪化が認められた方において、EGFR活性化変異とEGFRチロシンキナーゼ阻害薬抵抗性を誘導するT790M(トレオニンタンパクがメチオニンタンパクに変化)変異陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対して、新規EGFRチロシンキナーゼであるAZD9291が有効である可能性が明らかとなりました。
日本の対象患者を含む世界規模で実施された第2相臨床試験(AURA2試験)の結果を9月6日から9日までデンバーで開催された世界肺癌学会(WCLC2015)で、近畿大学の光冨徹哉氏によって発表されました。

なお、AZD9291の第1相試験(AURA試験)の結果をオンコロでも配信しています。

【肺がん】EGFR分子標的薬に抵抗性が生じた患者へのAZD9291の効果を確認(オンコロニュース20150426)

AZD9291は、野生型(受容体に変異がない患者)EGFRへの作用は弱く、EGFR活性化変異と耐性変異であるT790Mを有するEGFRを阻害する、選択性の高いEGFRチロシンキナーゼと阻害薬になります。したがって、変異のないEGF受容体にAZD9291が結合しても、副作用が少ない傾向にあることが示されていることが特徴となります。

今回のポイントは以下の通り。

【AURA2試験を受けられた患者基準】
・cobas EGFR Mutation テスト(コバス社のEGF受容体の変異の有無を確定する診断テスト)を用いた中央検査でT790Mの変異状態を確認するために、最近の治療ラインで病状が進行したあとの腫瘍検体が得られている患者
・少なくとも1つの測定病変があること、パフォーマンスステータスが0~1と比較的身体能力がある患者、受容可能な臓器機能が適格基準に含まれ、安定した脳転移を有する患者も含めて良い

【用法用量】
・患者はAZD9291の80mgを1日1回毎日服用

【登録された患者背景】
・中央検査による評価で、T790変異に加えて、エクソン19欠失がある患者が65%、L858R(ロイシンタンパクがアルギニンタンパクへ変化)変異がある患者が32%、その他の変異がある患者が4%
年齢中央値は64歳、女性が70%、WHO パフォーマンスステータス0が40%、 1が60%、アジア人が63%、脳転移があった患者が41%、前治療数中央値は2つ、2015年5月1日時点で、155人(78%)が投薬を継続中でした。

【結果】
奏効率(腫瘍が一定以上縮小した割合)
・全体は71%。うち、完全奏効(腫瘍が消失)が2人、部分奏効(腫瘍が一部縮小)が139人。
・奏効率のさらなる解析で、2次治療で73%、3次治療以降で70%となるなど、各グループで大きな差は認められなかった。
・エクソン19の欠失がある患者で78%だったのに対して、L858R変異の患者では59%と変異のタイプでは差が認められた。
◆がんの進行を抑えた期間の中央値
・全体で8.6カ月。6カ月経過時点でもがんが進行しなかった割合は70%、9カ月経過時点でもがんが進行しなかった割合48%。
◆副作用
グレード3(中等度から重度)以上の副作用:29%に発現
・多く認められた副作用:皮疹関連が42%(グレード3以上は1%)、下痢が39%(同1%)で、間質性肺疾患関連は4人(同1%)で発現。

【結論】
光冨氏は「有効性と安全性双方において、AZD9291の投与によるメリットは大きいと評価した上で、このフェーズ2試験の明確な結果を得るために、さらなる長期的なフォローアップが必要であると総評し、さらに、第3相臨床試験であるAURA3試験が進行中であることについても言及されています。

なお、AZD9291は日本肺癌学会と肺がん患者会のワンステップ(代表:長谷川一男氏)と共に、早期承認を求める意見書を提出しています。
肺がん AZD9291の早期承認の要望書を提出 肺癌学会と肺がん患者の会ワンステップ(オンコロニュース20150706)

現在、日本では上記試験の次のステップとしての第3相試験のAURA3試験(募集終了?)や、初回使用した場合を検証するFLAURA試験(募集中)、免疫チェックポイント阻害薬との併用時の効果を検証するCAURAL試験(試験中断中?)および術後補助化学療法としての使用を検討するADAURA試験(準備中)が計画されています。

【AZD9291の臨床試験情報】
◆AURA3
EGFR変異を有する進行非小細胞肺がんに対してEGFR阻害薬を使用した方に対するAZD9291第3相試験(募集終了?)
◆FLAURA
非小細胞肺がん対象 初回治療として第3世代EGFR-TKI阻害薬AZD9291と既存EGFR-TKI阻害薬を比較する第3相試験(オンコロ内)
◆CAURAL
治療歴有非小細胞肺がん EGFR阻害薬 AZD9291と免疫CP阻害薬MEDI4736 第3相臨床試験(中断?)(オンコロ内)
◆ADAURA
AZD9291 Versus Placebo in Patients With Stage IB-IIIA Non-small Cell Lung Carcinoma, Following Complete Tumour Resection With or Without Adjuvant Chemotherapy (ADAURA)(Clinical trials.gov)

記事:前原 克章(加筆修正:可知 健太)

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