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免疫チェックポイント阻害薬キイトルーダ 多くの治療に失敗したホジキンリンパ腫患者への奏効率65% JCO

  • [公開日]2016.07.15
  • [最終更新日]2017.11.13[タグの追加] 2017/11/13

目次

古典的ホジキンリンパ腫に対する免疫チェックポイント阻害薬キイトルーダの実力は?

プログラム細胞死受容体(PD-1)を阻害する抗体医薬ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ/キートルーダ)の古典的ホジキンリンパ腫(HL)患者を対象とする第1相臨床試験(KEYNOTE-013、NCT01953692)の結果を、米国ダナ・ファーバーがん研究所のPhilippe Armand氏がJCO(Journal of Clinical Oncology)オンライン(2016年6月27日)に論文発表した。

悪性リンパ腫はホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)の総称で、ホジキンリンパ腫は、日本での発症頻度は低く、悪性リンパ腫全体の約10%程度である。ホジキンリンパ腫は古典的ホジキンリンパ腫と結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫に大別され、古典的ホジキンリンパ腫はさらに結節硬化型、混合細胞型、リンパ球豊富型、ならびにリンパ球減少型の4種に分類される。本試験に登録された31人中30人(97%)は古典的ホジキンリンパ腫の結節硬化型で、1人(3%)は混合細胞型であった。

31人中17人(55%)の患者は5種類以上の治療歴があり、全ての患者が悪性リンパ腫治療薬ブレンツキシマブ ベドチン(商品名アドセトリス)の治療に失敗していた。また、22人(71%)は自家幹細胞移植(ASCT)の後に再発していた。

キートルーダでの奏効率は65%、うち完全寛解16% 1年時点の無増悪生存率は49%

古典的ホジキンリンパ腫患者31人にペムブロリズマブ10mg/kgを2週毎に静注した。

ペムブロリズマブの治療開始後12週時点での奏効率は65%(20人)で、完全寛解(CR)は16%(5人)、部分寛解(PR)は48%(15人)であった。加えて、病勢安定SD)が23%(7人)に認められた。追跡期間中央値17カ月の解析で、奏効した患者の70%は24週間以上奏効を維持し、治療後24週時点での無増悪生存(PFS)率は69%、52週時点でもPFS率49%を示した。

治療と関連するグレード3の有害事象は5人(16%)に発現したが、グレード4は認められず、治療関連死もなかった。

ホジキンリンパ腫の遺伝子変異がペンブロリズマブと相性がいいか

古典的ホジキンリンパ腫で特徴的に増加する大型の悪性腫瘍細胞HRS(ホジキン-リード・ステルンベルグ)細胞がある。最近の研究では、このHRS細胞がPD-1経路を利用して抗腫瘍免疫を回避する可能性が示唆され、染色体9p24.1の変化がPD-1の2つのリガンド(PD-L1、PD-L2)遺伝子の両方を高頻度に増幅させ、結果として、PD-L1とPD-L2の蛋白発現量が増加すると報告されている。

こうした知見を踏まえ、Philippe Armand氏らも古典的HLの生存はPD-1経路に強く依存するという仮説を立て、実際、本試験結果が支持された形となった。

本試験は第1相試験で、安全性と完全寛解(CR)率を評価することが主要目的であったため、詳細な遺伝子解析は行われていないが、多くの治療歴を有する古典的HLで、しかも全ての患者がアドセトリスの治療でも有益性が得られなかったにもかかわらず、90%の患者はペムブロリズマブの治療により腫瘍の減少が証明された。バイオマーカー解析では、仮説通りPD-L1とPD-L2の発現亢進が確認され、ペムブロリズマブの治療前と比べT細胞数(CD4陽性、CD8陽性)、ナチュラルキラー(NK)細胞、およびT細胞総数が増加した。おそらく、ペムブロリズマブのPD-1阻害作用を介して抗腫瘍免疫シグナルが活性化されたと考えられる。

オプジーボと同様の効果を発揮

本試験の結果は全般的に、同様の患者を対象として行われたPD-1阻害薬ニボルマブ(商品名オプジーボ)と同様であった。本試験で実施したバイオマーカーや免疫細胞の解析は探索的で、患者数も少ないため、より大規模な試験で検証する必要があるが、ホジキンリンパ腫においてPD-1を阻害することは、前述したHRS細胞の遺伝子変異などに基づき、固形がんや他の血液がんの場合と差別化できそうだ。なぜ奏効しやすいかを追求していかなければならない。

ブレンツキシマブ ベドチン(アドセトリス)は、ホジキンリンパ腫で発現が亢進するCD30を標的として腫瘍細胞に薬剤を届ける抗体薬物複合体で、日本では2014年4月から使われている。CD30を目印として結合した後、微小管阻害薬のモノメチルアウリスタチンE(MMAE)が腫瘍細胞を狙い撃ちする仕組みである。この分子標的治療でも再発した患者で、ペムブロリズマブが免疫チェックポイントによる抗腫瘍免疫の回避を妨げたところ、完全あるいは部分的な寛解が認められ、腫瘍細胞が減少したのである。効果を発揮する、あるいは発揮しないメカニズムは複雑と思われるが、今後の研究に期待を寄せる。

日本国内でペムブロリズマブは、切除不能または転移性の悪性黒色腫で2012年12月に、切除不能の進行または再発の非小細胞肺がんで2016年2月に承認申請された。現在は膀胱がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、胃がん、頭頸部がん、多発性骨髄腫、食道がん、大腸がん、ホジキンリンパ腫などを対象に臨床試験が行われており、治癒切除不能の進行・再発胃がんでは、厚労省の「先駆け審査指定制度」施行後の初の対象品目の一つに指定された。全世界では30を超えるがん種を対象に臨床試験が進行中である。

Programmed Death-1 Blockade With Pembrolizumab in Patients With Classical Hodgkin Lymphoma After Brentuximab Vedotin Failure.(J Clin Oncol. 2016 Jun 27)

記事:川又 総江 & 可知 健太

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