10月7日~10月11日、第40回 欧州臨床腫瘍学会(ESMO2016)が開催。2日目の10月8日、3回あるプレジデンシャルシンポジウムのうち1回目が開催。以下の演題が発表された。
・ホルモン受容体陽生HER2陰性の閉経後乳がんを対象とした、初回治療としてレトロゾール(フェマーラ)とサイクリン依存性キナーゼ4/6(CDK4/6)阻害薬リボシクリブ(Ribociclib;LEE011)の併用療法の第3相臨床試験(MONALEESA2)の中間解析結果
・ハイリスク ステージ3悪性黒色腫の術後補助化学療法として免疫チェックポイント阻害薬CTLA-4抗体イピリブマブ(ヤーボイ)を使用した第3相臨床試験結果
・既治療のプラチナ感受性卵巣がんを対象とした、PARP阻害薬ニラパリブ(niraparib)の第3相臨床試験(ENGOT-OV16/NOVA trial)の結果
上記演題は同時にThe New England Journal of Medicine(NEJM)に掲載されており、そちらで詳細を紹介する予定であるため、今回は簡単に紹介したい。
目次
乳がん初回治療にはフェマーラ+リボシクリブは良好な結果
ホルモン受容体陽生HER2陰性の閉経後乳がん患者の初回治療には、フェマーラにCDK4/6阻害薬リボシクリブを加えると、病態進行を抑える期間である無増悪生存期間(PFS)が44%改善されるとのこと。(HR: 0.556, p = 0.00000329)
ESMO 2016 Press Releaseより
*上の線がフェマーラ+リボシクリブ、下の線がプラセボ(フェマーラ+プラセボ(偽薬))。縦軸が割合(100%→0%)で横軸が時間軸、よって、上を推移する方が良好であるといえる。点線は50%の方が病態が進行してしまったといえる(中央値)。
ESMO 2016 Press Release: Ribociclib Improves Progression-free Survival in Advanced Breast Cancer
悪性黒色腫(メラノーマ)の術後補助化学療法にてヤーボイ使用で再発リスク、死亡リスク減
ハイリスクのステージ3悪性黒色腫患者に対して、手術後の術後補助化学療法(アジュバント療法)にCTLA-4抗体であるヤーボイを使用すると再発リスク、遠隔転移リスクが減少、生存期間も延長したとのこと(HR=0.72, p=0.001)。対照はプラセボ(偽薬)。
ESMO 2016 Press Releaseより
RFS:recurrence-free survival 再発しなかった割合や期間
DMFS:distant metastasis-free survival (DMFS).
OS:overall survival 生存期間
5-years rates:5年生存率
Median(mos):中央値(月)
卵巣がん患者対象のPARP阻害薬ニラパリブの有望な結果
既治療のプラチナ感受性卵巣がん患者にPARP阻害薬ニラパリブを使用すると、病態進行を抑える期間である無増悪生存期間(PFS)がBRCA変異の有無問わずにリスクが減少したとのこと。PARP阻害薬はBRCA変異を有するがんに対して有効であるとされている。BRCA変異陽性ではリスクを73%減少している。
ESMO 2016 Press Releaseより
PFS Median,Month:無増悪生存期間中央値(月)
gBRCAmut:BRCA変異陽性
non-gBRCAmut:BRCA変異陰性
記事:可知 健太
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