昨今、がんサバイバーの心血管疾患の影響への関心が高まっている一方、早期乳癌における心血管死リスクに対する住民ベースのデータは限られているのが現状である。
そこで、カナダ トロント大学のHusam Abdel-Qadir氏を中心に、早期乳がん女性における心血管死の発生が、競合するリスクに占める割合を明らかにするための大規模疫学研究が行われ、その結果が、10月12日のJAMA Cardiolgyに掲載された。
66歳以上にて心血管死の発生リスクが上昇、10年サバイバーでは死因が乳がんを上回る
1998年4月1日~2012年3月31日に登録された早期乳がん女性98,999人による住民対象コホート研究(大規模疫学研究)が行われた。患者は死亡するまで追跡、または2013年12月31日まで調査された。
2013年のベースライン特性は、管理者データベースとオンタリオ州がんレジストリから決定した。バイタル統計データは、死亡の原因を決定するために使用した。原因特異的死亡率を推定するため累積発生率関数を使用した。筆者らはベースライン特性と心血管死亡率との関連を原因特異的な危険関数を用いて検討した。
結果、98,999人(年齢中央値60歳)のうち21,123(21.3%)が追跡期間中に死亡。死亡までの期間中央値は4.2年であった。
最も多い死亡原因は乳がんで、10,550人(49.9%)。心血管系が原因の死亡は3,444人(16.3%)であった。
心血管疾患、糖尿病、高血圧症既往ない66歳未満の女性では心血管死はまれであった。一方、66歳以上の女性における10年の乳がん死亡は11.9%(95%CI 11.6-12.3%)、心血管死は7.6%(95%CI 7.3-7.9%)であった。
心血管疾患既往患者における乳がんおよび心血管疾患死亡リスクは、最初の5年間は同等であったが、それ以降は心血管系死の頻度のほうが多くなった(10年累積発生率:乳がん死14.6%、95%CI 13.7-15.4% vs 心血管死16.9%、95%CI 16.0-17.8%)。
66歳以上で乳がん診断後5年以上経過したにサバイバーにおいて、各々の累積発生率を5%としたとき、心血管疾患は乳がんを超えて10年における最多の死亡原因となった。
心血管死は、早期乳がんの高齢女性における重要なリスクである。この試験の結果は、乳がん診断後の心血管系の予防に対する十分な注意を義務付けるものだと言える。
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