6月2日から6日までシカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO2017)で、米国スタフォード大学メディカルスクールのGeorge W. Sledge氏によってCDK4/6阻害薬であるアベマシクリブの乳がんへの効果に関する結果が発表された。
アベマシクリブはCDK4/6(サイクリン依存性キナーゼ4および6)を阻害し、がん細胞の細胞周期を障害させ、細胞分裂および増加を防ぐ。
2017年4月1日から5日に米国ワシントンDCで開催された米国癌学会(AACR)では、フェーズ2試験である MONARCH 1試験の全生存期間の最終結果がカリフォルニアサンフランシスコ大学のHope S. Rugo氏によって発表され、全生存期間中央値は22.32ヶ月であった。(4月3日,Abstract No. CT044)
今回、ASCO2017では、ホルモン受容体陽性HER2陰性進行乳癌に対し、フルベストラントへアベマシクリブを追加した国際二重盲検フェーズ3試験(MONARCH2、NCT02107703)の結果の詳細が明らかとなった。
MONARCH 2試験は、669人が通常の用法用量のフルベストラントとアベマシクリブ(連日12時間おきに150mg、投与量修正までは200mgを経口投与)を受ける群(アベマシクリブ群)と、フルベストラントとプラセボを受ける群(プラセボ群)に2対1で割りつけられた。
主要評価項目は、研究グループの評価によるPFS。副次評価項目は全生存期間、奏効率などと安全性だった。試験は19カ国142施設で行われ、日本の施設も含まれている。臨床試験の観察期間中央値は19.5カ月だった。
試験の結果、無増悪生存期間(PFS)中央値は、アベマシクリブ群は16.4カ月、プラセボ群が9.3カ月で、45%がんの進行するリスクをアベマシクリブ群で減少させ(ハザード比0.55%、p<0.0000001)、で有意にアベマシクリブ群が良好だった。
奏効率は、アベマシクリブ群が35.2%(完全奏効が3.1%)、プラセボ群が16.1%(0.4%)、がん細胞の測定が可能な病変を有する患者の奏効率は、アベマシクリブ群が48.1%(完全奏効が3.5%)、プラセボ群が21.3%(完全奏効0%)だった。
奏効している期間の中央値では、アベマシクリブ群は臨床統計学的に未到達、プラセボ群は25.6カ月であり、有意にアベマシクリブ群で高い奏効を示した。
安全性の評価では、治療に関連する副作用は、プラセボ群と比べてアベマシクリブ群で多かったものは、下痢(アベマシクリブ群86.4%、プラセボ群24.7%)、好中球減少症(アベマシクリブ群46.0%、プラセボ群4.0%)、吐き気(アベマシクリブ群45.1%、プラセボ群22.8%)、
倦怠感(アベマシクリブ群39.9%、プラセボ群26.9%)などだった。
グレード3/4の好中球減少症はアベマシクリブ群の26.5%で発現した。下痢は投与して比較的早い時期に起こるがアベマシクリブの用量調整と下痢を調整する薬の処方で管理可能だった。
今後、術後補助化学療法として、ホルモン受容体陽性、HER2陰性、ハイリスク乳癌に対して、内分泌療法とアベマシクリブを併用する臨床試験 monarchE の患者組み入れが近い将来開始されるようである。
記事:前原 克章&可知 健太