がん免疫療法の併用療法、すなわち、プログラム細胞死受容体1(PD-1)標的抗体のニボルマブ(商品名オプジーボ)と細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)標的抗体のイピリムマブ(商品名ヤーボイ)の併用療法を、悪性黒色腫が脳転移した患者を対象に実施した初の第2相非盲検試験(CheckMate-204、NCT02320058)で、頭蓋内奏効率55%という中間結果が得られた。脳転移巣を治療標的とした貴重な試験で、2017年6月2日から5日開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表された。
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免疫チェックポイント2分子標的で脳転移巣の治療可能性を検証
未治療の悪性黒色腫で、無症候性脳転移(腫瘍径0.5㎝から3.0㎝)が1カ所以上ある患者75例を対象とし、オプジーボ1mg/kg+ヤーボイ3mg/kgを3週ごとに4回静注し(導入療法)、以降はオプジーボ3mg/kgを2週ごとに単独で静注した(維持療法)。
その結果、併用療法の投与回数中央値は3回で、4回併用投与による導入療法を完了したのは28例(27%)、42例(56%)がオプジーボ単剤による維持療法を開始した。解析時点で、オプジーボ単剤の投与回数中央値は12回であった。
主要評価項目である頭蓋内の臨床的有用率(完全奏効[CR]+部分奏効[PR]+6カ月以上持続する病勢安定[SD]の患者の割合)は、追跡期間中央値9.2カ月の時点で60%で、CRは16例(21%)、PRは25例(33%)、6カ月以上のSDは4例(5%)であった。
安全性は脳転移のない悪性黒色腫患者で報告されているデータと同様で、治療に関連するグレード3からグレード4の有害事象は39例(52%)に発現した。そのうち、頭痛など神経性事象は6例(8%)に認められた。治療関連死は3例(心原性ショック、頭蓋内出血、悪性新生物進行)であった。
死に直結する脳転移の治療実現へ前進
悪性黒色腫は、早期に治療を開始すれば治癒も可能であるが、ステージ4まで進行すると治療が難しく、ステージ4の患者の60%以上が脳に転移するとされ、病勢進行や死亡につながる可能性が高い。米国のステージ4の進行期悪性黒色腫患者では、5年生存率は15%から20%、10年生存率は10%~15%である。
脳転移を有する進行期悪性黒色腫患者を対象とする治療の研究は、現在までにわずかしかなく、脳転移のある患者を除外する臨床試験が少なくない。こうした意味において、本試験データは極めて重要であり、しかも、脳転移巣を標的とする治療は放射線療法が標準とされている現状の中、全身療法により有用性が検証されたことは画期的である。
なお、日本で承認されているオプジーボの適応症は、悪性黒色腫をはじめ、非小細胞肺がん、腎細胞がん、古典的非ホジキンリンパ腫、および頭頸部がんである。胃がんの適応では承認申請中で、臨床試験が実施されているがん種は食道がん、胃食道接合部がん、小細胞肺がん、肝細胞がん、膠芽腫、尿路上皮がん、悪性胸膜中皮腫、卵巣がん、胆道がんなどである。日本で承認されているヤーボイの適応症は悪性黒色腫である。
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