2017年9月29日、HER2陽性早期乳がん患者に対する術後補助化学療法としてのペルツマブ(商品名パージェタ;以下パージェタ)+トラスツズマブ(商品名ハーセプチン;以下ハーセプチン)+化学療法併用療法が、米国食品医薬品局(FDA)より追加の生物製剤承認申請(sBLA)を受領し、優先審査品目に指定されたことをロシュ社がプレスリリースで公表した。
今回の追加の生物製剤承認申請(sBLA)の根拠は、術後早期乳がん患者(N=4805人)に対してパージェタ+ハーセプチン+化学療法併用群(N=2400人)、またはハーセプチン+化学療法併用群(N=2404人)を無作為に振り分けて、主要評価項目である術後補助化学療法後にいずれかの部位での浸潤性乳がんの再発または理由の如何を問わず死亡を認めない、生存期間として定義される浸潤病変のない生存期間(iDFS)を比較検証した第Ⅲ相のAPHINITY試験(NCT01358877)の結果に基いている。
本試験の結果、主要評価項目である3年iDFSはITT集団全体(N=4804人)でパージェタ+ハーセプチン+化学療法併用群94.1%に対してハーセプチン+化学療法併用群93.2%であった(ハザード比0.81、95%信頼区間:0.62-0.96、p=0.045)。ITT集団以外にもリンパ節転移の有無、HR陽性または陰性におけるサブグループ解析を実施しており、リンパ節転移有りの患者群(N=3005人)ではパージェタ+ハーセプチン+化学療法併用群92%に対してハーセプチン+化学療法併用群90.2%、リンパ節転移無しの患者群(N=1799人)ではパージェタ+ハーセプチン+化学療法併用群97.5%に対してハーセプチン+化学療法併用群98.4%。
HR陽性の患者群(N=3082人)ではパージェタ+ハーセプチン+化学療法併用群94.8%に対してハーセプチン+化学療法併用群94.4%、HR陰性の患者群(N=1722人)ではパージェタ+ハーセプチン+化学療法併用群92.8%に対してハーセプチン+化学療法併用群91.2%であった。
一方、安全性はというとグレード3以上の有害事象の発症率はパージェタ+ハーセプチン+化学療法併用群64.2%に対してハーセプチン+化学療法併用群57.3%であった。グレード3以上の有害事象でパージェタ+ハーセプチン+化学療法併用群で発症率の高い副作用は好中球減少症(16.3%)、発熱性好中球減少症(12.1%)、下痢(9.8%)、貧血(6.9%)であった。
この度パージェタがFDAより生物製剤承認申請(sBLA)を受領し、優先審査品目に指定されたこと対して、ロシュ社の最高医学責任者兼国際開発責任者のSandra Horning博士は以下のようなコメントを述べている”HER2陽性早期乳がん患者に対する術後補助化学療法としてパージェタベースの化学療法レジメンが優先審査品目に指定されたことを嬉しく思います。我々の早期乳がんに対する治療ゴールは治癒する可能性の治療を患者さんに提供することです。早期乳がんにも関わらず現在の治療法では再発する可能性がありますので。”
ただし、パージェタ(420mg14mL1瓶)の薬価hは238,491円である。今回の試験では初回投与に840㎎、以降3週ごと420㎎を1年間使用する必要があり、費用対効果を考えると議論が必要なのかもしれない。
なお、パージェタベースの化学療法レジメンがHER2陽性早期乳がん患者に対する術後補助化学療法としてFDAより承認される日は、2018年1月28日と予定されている。
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