2017年10月23日、医学誌『THE LANCET Oncology』にて進行性肺または胸腺カルチノイド患者に対するパシレオチド(商品名シグニフォー)単剤療法、エベロリムス(商品名アフィニトール)単剤療法、そしてシグニフォー+アフィニトール併用療法の有効性を検証した第II相のLUNA試験(NCT01563354)の結果が公表された。
本試験は、12ヶ月以内に放射線学的疾患進行を認めた進行性肺または胸腺カルチノイド患者(N=124人)に対して28日に1回の投与間隔でシグニフォー60mg単剤療法(N=41人)、1日1回アフィニトール10mg単剤療法(N=42人)、そしてシグニフォー+アフィニトール併用療法(N=41人)を1:1:1の割合で振り分け12ヶ月間投与し、主要評価項目である9ヶ月間無増悪割合を比較検証した多施設共同オープンラベルの第II相試験である。
なお9ヶ月間無増悪割合とは、RECIST1.1に基づく完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、安定(SD)を9ヶ月間示した割合として定義している。
本試験の結果、主要評価項目である9ヶ月間無増悪割合はシグニフォー単剤療法群39.0%(N=16人)、アフィニトール単剤療法群33.3%(N=14人)、そしてシグニフォー+アフィニトール併用療法群58.5%(N=24人)であった。なお、どの群においても完全奏効(CR)した患者0人、部分奏効(PR)した患者1人であった。
一方の安全性として、グレード3または4の最も一般的な治療関連有害事象(AE)はシグニフォー単剤療法群ではγ-グルタミルトランスフェラーゼ10%、下痢7%、そして高血糖7%であった。アフィニトール単剤療法群では高血糖17%、口内炎10%、下痢7%であった。シグニフォー+アフィニトール併用療法群では高血糖22%、下痢10%であった。
また、12ヶ月間の治療後56日以内までの間に発症した有害事象(AE)により死亡した患者はアフィニトール単剤療法群では下痢を原因とする急性腎障害で1人、シグニフォー+アフィニトール併用療法群では下痢およびに尿路性敗血症、急性腎障害および呼吸器不全で2人であった。
以上の試験の有効性、安全性を受けて代表治験医師は以下のように述べている。”本試験は3群全てで主要評価項目を達成しました。また、安全性のプロファイルも既存の副作用と一致しており、肺または胸腺カルチノイド患者に対するシグニフォー+アフィニトール併用療法のさらなる抗腫瘍効果を発揮するための確認が必要です。”
本試験の結果が世に出るまで、進行性肺または胸腺カルチノイド患者に対する前向き試験は存在しなかった。その意味で本試験によりシグニフォー単剤、アフィニトール単剤、そしてシグニフォー+アフィニトール併用療法の有効性が証明された臨床意義は非常に大きいであろう。
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