2018年1月18日より20日までアメリカ合衆国・カルフォルニア州・サンフランシスコで開催されている消化器癌シンポジウム(ASCO-GI2018)のポスターセッションにて、マイクロサテライト不安定性のない(MSS;以下MSS)転移性大腸がん患者に対するナパブカシン(BBI608)+ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)併用療法の安全性、有効性を検証した第I相試験(NCT02851004)の結果が国立がん研究センター東病院消化管内科・川添彬人氏らにより公表された。
本試験は、マイクロサテライト不安定性のない(MSS;以下MSS)転移性大腸がん患者(N=8人)に対して21日を1サイクルとして1日2回ナパブカシン(BBI608)240mgまたは480mg+1日目にキイトルーダ200mg併用療法を投与し、主要評価項目である第II相フェーズの推奨用量を決定したオープンラベルの第I相試験である。なお、本試験に登録された患者8人のうち5人がナパブカシン(BBI608)240mg、3人が480mgの用量により治療されている。
本試験の結果、どちらの用量群においても用量制限毒性(DLT)、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は確認されなかった。ただし、ナパブカシン(BBI608)240mg投与群において用量制限毒性(DLT)評価期間中に2人の患者で病勢進行を認めたため試験より除外されている。グレード1または2の治療関連有害事象(TRAE)としてはナパブカシンを原因とする下痢が57%、甲状腺機能亢進症が14%、甲状腺機能低下症が14%、発熱が14%の患者で確認された。
また、ナパブカシン(BBI608)480mg投与群においてリンパ節/肺に転移を認める患者1人が12週間以上の腫瘍縮小を達成し、腫瘍マーカーであるCEA値の顕著な減少も確認された。
以上の第I相試験の結果より、川添彬人氏らは以下のように結論を述べている。”ナパブカシン(BBI608)480mgがナパブカシン(BBI608)+キイトルーダ併用療法の第II相フェーズ推奨用量として本試験により決定されました。STAT3と呼ばれる細胞を癌化させる働きを持つタンパク質を標的にするナパブカシン(BBI608)と抗PD-1抗体薬であるキイトルーダの組み合わせは、MSS転移性大腸がんにとって抗腫瘍効果を高い治療である可能性が示唆されました。”
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