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ALK陽性非小細胞肺がん患者、EML4-ALK転座のvariant割合によりALK阻害薬の臨床効果は異なる医学誌『Journal of Clinical Oncology (JCO)』より

  • [公開日]2018.03.14
  • [最終更新日]2018.03.14

2018年1月26日、医学誌『Journal of Clinical Oncology(JCO) 』にてALK陽性型非小細胞肺がん患者のEML4-ALK転座variant割合に基づいたALK抵抗性変異とALKチロシンキナーゼ阻害薬の臨床的効果について検証した試験の結果がDana-Farber Cancer Institute・Jessica J. Lin氏らにより公表された。

本試験は、Massachusetts General HospitalとUniversity of Californiaの診療記録よりALK陽性非小細胞肺がん患者(N=129人)の診療記録に基づいて病理学的特徴などを取り出し、生検した病勢進行後の腫瘍標本を次世代シーケンシング(NGS)によりEML4-ALK転座のvariant割合を特定し、それぞれの無増悪生存期間PFS)、全生存期間OS)の違いを検証した試験である。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。治療歴は第一世代ALK阻害薬であるクリゾチニブ(商品名ザーコリ;以下ザーコリ)治療歴のある患者は94%(N=121人) 、第二世代ALK阻害薬であるセリチニブ(商品名ジカディア;以下ジカディア)治療歴42%(N=54人) 、アレクチニブ(商品名アレセンサ;以下アレセンサ)治療歴54%(N=70人) 、ブリガチニブ(商品名Alunbrig;以下Alunbrig)治療歴11%(N=14人) 、第三世代ALK阻害薬であるロルラチニブ(PF-06463922)治療歴30%(N=39人) 。ALK阻害薬の前治療歴数は1種類が22%(N=28人) 、2種類が35%(N=45人) 、3種類以上が43%(N=56人) 。

ALK遺伝子変異はEML4-ALK融合遺伝子変異を有する患者は95%(N=123人) 、最も多くの患者で確認されたEML4-ALK転座のvariant割合としてはvariant1が43%(N=55人) 、variant2が40%(N=51人) 。それ以外のvariant割合はvariant2(E20;A20)6%、variant5’(E18;A20)4%、variant5(E2;A20)2%、variant7(E14;A20)1%。

EML4-ALK転座以外の変異を有する患者は5%(N=6人)で、HIP1-ALK融合遺伝子を有する患者(N=3人)、KIF5B-ALK融合遺伝子を有する患者(N=1人)、PRKAR1A-ALK融合遺伝子を有する患者(N=1人)、MTA3-ALK融合遺伝子を有する患者(N=1人)。

EML4-ALK転座の中で最も多くの患者で確認されたvariant1、variant3の患者背景は下記の通りである。年齢中央値はvariant1が55歳(22-78歳)、variant3が51歳(31-76歳)。性別はvariant1が男性55%(N=30人)、variant3が男性51%(N=26人)。喫煙歴なしの患者割合はvariant1が76%(N=42人)、variant3が80%(N=41人)。人種はvariant1が白人78%(N=43人)、アジア人13%(N=7人)、variant3が白人65%(N=33人)、アジア人27%(N=14人)。

肺がんの組織はvariant1が腺がん96%(N=53人)、扁平上皮がん2%(N=1人)、variant3が腺がん98%(N=50人)、扁平上皮がん0%(N=0人)、診断時のがん進行具合はvariant1がステージI5%(N=3人)、ステージII11%(N=6人)、ステージIII7%(N=4人)、ステージIV76%(N=42人)、variant3がステージI2%(N=1人)、ステージII8%(N=4人)、ステージIII12%(N=6人)、ステージIV78%(N=40人)、中枢神経系CNS転移ありの患者割合はvariant1が65%(N=36人)、variant3が69%(N=35人)。以上のように、variant1、variant3の2群間で患者背景の違いはなかった。

上記背景を有するEML4-ALK転座のvariant1、variant3の患者が1剤目、または2剤目のALKチロシンキナーゼ阻害薬に対して抵抗性を示した時に生検を実施し、EML4-ALK転座のvariant割合が抵抗性を獲得するメカニズムに影響を与えるかどうかを検証した結果は下記の通りである。

ALK阻害薬に対して抵抗性を示す遺伝子変異を有する患者割合はvariant1群で30%(N=10人)、variant3群で57%(N=25人)、variant3群で統計学的有意に多かったP=0.023)。また、第一世代、第二世代ALK阻害薬に対して特に抵抗性を示すG1202R遺伝子変異を有する患者割合はvariant1群で0%(N=0人)、variant3群で32%(N=14人)、variant3群で統計学的有意に多かったP<0.001)。

また、各ALK阻害薬に対するvariant1、variant3の無増悪生存期間(PFS)の結果は下記の通りである。なお、診断後より測定した全生存期間(OS)中央値はvariant1群5.0年に対してvariant3群3.6年(ハザードリスク比:1.16,95%信頼区間:0.67-2.01,P=0.584)、ALK阻害薬の治療歴のあるALK陽性非小細胞肺がん患者の全生存期間(OS)中央値と類似していた。

第一世代ALK阻害薬であるザーコリ治療歴のある患者の無増悪生存期間(PFS)中央値はvariant1群(N=51人)9.2ヶ月に対してvariant3群(N=48人)7.5ヶ月、variant3群で病勢進行または死亡のリスクが30%増加するも(ハザードリスク比:1.30,95%信頼区間:0.85-1.98,P=0.229)、統計学的有意な差は示さなかった。

第二世代ALK阻害薬であるジカディア 、アレセンサ、Alunbrig治療歴のある患者の無増悪生存期間(PFS)中央値はvariant1群(N=37人)11.8ヶ月に対してvariant3群(N=40人)7.9ヶ月、variant3群で病勢進行または死亡のリスクが45%増加するも(ハザードリスク比:1.45,95%信頼区間:0.88-2.38,P=0.141)、統計学的有意な差は示さなかった。

第三世代ALK阻害薬であるロルラチニブ(PF-06463922)治療歴のある患者の無増悪生存期間(PFS)中央値はvariant1群(N=12人)3.3ヶ月に対してvariant3群(N=17人)11.0ヶ月、variant3群で病勢進行または死亡のリスクが69%統計学的有意に減少した(ハザードリスク比:0.31,95%信頼区間:0.12-0.79,P=0.011)。なお、多変量解析により年齢、性別、人種、喫煙歴、がんの進行具合、肺がんの組織別、中枢神経系(CNS)転移の有無などの患者背景を調整後も同様の結果が得られている。

以上の結果より、Jessica J. Lin氏らは以下のように結論を述べている。”EML4-ALK転座のvariant割合はALK阻害薬に対して抵抗性を示す遺伝子変異、特にG1202R遺伝子変異に関係しています。そして、ロルラチニブ(PF-06463922)がvariant1よりもvariant3に対して高い臨床効果を示したように、variant割合はALK阻害薬の選択基準の重要な因子となり得る可能性が本試験により示唆されました。”

Impact of EML4-ALK Variant on Resistance Mechanisms and Clinical Outcomes in ALK-Positive Lung Cancer(DOI: 10.1200/JCO.2017.76.2294 Journal of Clinical Oncology – published online before print January 26, 2018)

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