2018年2月14日、医学誌『The BMJ』にてウルトラプロセスフード(超加工食品)摂取量とがんの発症リスクの関連性を検証したNutriNet-Santé試験(NCT03335644)の結果がSorbonne Paris Cité Epidemiology and Statistics Research Center・Thibault Fiolet氏らにより公表された。なお、ウルトラプロセスフード(超加工食品)とは、清涼飲料水、シリアル、袋詰めのパン・菓子、袋入りのスナック類、デザート、再構成肉(チキンナゲットなどの素材)、即席めん類などの総称である。
NutriNet-Santé試験とは、2009年より2017年の間にFrench NutriNet-Santéコーホートに登録されている18歳以上のがんを発症していない年齢中央値42.8歳(18.0-72.8歳)の成人(N=104,980人,男性22,821人:女性82,159人)を対象に、24時間当たりの食品摂取量オンライン上のアンケート調査より記録、収集し、全てのがん種、乳がん、前立腺がん、大腸がんなどの発症率とウルトラプロセスフード(超加工食品)摂取量の関連性を検証する目的でフランスで実施された前向きコーホート試験である。
本試験に参加した人のアンケート内容は下記のような5項目である。誕生日、性別、職業、教育レベル、喫煙の有無、子供の有無などのライフスタイルに関する項目、体重、身長などの身体に関する項目、食生活に関する項目、1週間の運動量など活動性に関する項目、本人、家族の疾患歴、避妊、閉経の治療薬の処方有無、閉経の有無など健康状態に関する項目の5つである。
本試験のフォローアップ期間中央値5年時点で、参加者の内2228人が新規にがんと診断されており、その内訳は乳がん33%(N=739人)、前立腺がん13%(N=281人)、大腸がん7%(N=153人)であった。このコーホートにおけるがんの発症率とウルトラプロセスフード(超加工食品)摂取量の関連性を検証した結果、ウルトラプロセスフード(超加工食品)の摂取量(※カロリーベースではなく重量ベース)の割合が全食品群における割合で10%増加することでがんを発症する危険性が12%統計学的有意に増加(ハザードリスク比:1.12,95%信頼区間:1.06-1.18,P<0.001)、乳がんを発症する危険性が11%統計学的有意に増加(ハザードリスク比:1.11,95%信頼区間:1.02-1.22,P=0.02)することを示した。なお、乳がんは乳がんでも閉経後乳がんにおいてはウルトラプロセスフード(超加工食品)の摂取量の割合により発症のリスクが統計学的有意に高まるが(P=0.04)、閉経前乳がんにおいては高まらない(P=0.20)ことを示した。
また、上記結果が得られたコーホートを対象に年齢、性別、喫煙の有無、運動の有無、食事の栄養素などの参加者の背景を調整した後も同様の結果が得られている。一方で、前立腺がん、大腸がんにおいてはウルトラプロセスフード(超加工食品)の摂取量の割合によりがんの発症リスクが高まるような関係性は確認されなかった。なお、本試験の参加者の内、食品群におけるウルトラプロセスフード(超加工食品)の摂取量が4分の1以上である参加者の特徴は4分の1未満の参加者に比べて年齢は若く、現在喫煙をしており、教育レベルは低水準であり、活動性レベルも低く、家族でがんを発症した発症歴が少ないなどであり、ウルトラプロセスフード(超加工食品)以外にもカロリー消費量、脂質、炭水化物、ナトリウムの摂取割合が高いなどの特徴もあった。
以上のNutriNet-Santé試験の結果よりThibault Fiolet氏らは以下のように結論を述べている。”大規模前向き試験の結果、食品群におけるウルトラプロセスフード(超加工食品)の摂取量が10%増加することで、全てのがん種、乳がんの発症リスクを10%以上高める結果が得られました。この関係性を確証を得るために食品添加物をはじめ様々な加工方法により、がん発症リスクの関係性を検証していく必要があるでしょう。”
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