2018年1月18日より20日までアメリカ合衆国・カルフォルニア州・サンフランシスコで開催されている消化器癌シンポジウム(ASCO-GI2018)のポスターセッションにて、ベバシズマブ(商品名アバスチン:以下アバスチン)治療歴のあるKRAS野生型進行再発大腸がん患者に対するパニツムマブ(商品名ベクティビックス:以下ベクティビックス)、セツキシマブ(商品名アービタックス:以下アービタックス)の有効性を比較検証した2つの試験であるASPECCT試験(NCT00357682)、WJOG6510G試験(UMIN000006643)統合解析結果が愛知県がんセンター中央病院薬物療法部・谷口浩也氏らにより公表された。
今回の統合解析は、フッ化ピリミジン、オキサリプラチン、イリノテカンに対して不応または不耐を示したKRAS野生型進行再発大腸がん患者に対し、アービタックス単剤療法に対するベクティビックス単剤療法の全生存期間(OS)の非劣性を証明した第III相のASPECCT試験に登録された患者1010人。また、同じ背景を有する患者に対し、アービタックス+イリノテカン併用療法に対するベクティビックス+イリノテカン併用療法の全生存期間(OS)の非劣性を証明した第II相のWJOG6510G試験に登録された患者121人。
合計1131人を対象に前治療歴としてアバスチンが投与された患者(N=374人,ベクティビックス群185人,アービタックス群189人)を対象に、主要評価項目として全生存期間(OS)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)を比較検証した統合解析である。
本統合解析の結果、主要評価項目である全生存期間(OS)中央値は 主要評価項目ベクティビックス群12.8ヵ月(10.8~14.4ヵ月)に対してアービタックス群10.1ヵ月(8.9~11.7ヵ月)、ベクティビックス群で死亡(OS)のリスクが28%(ハザード比:0.72,95%信頼区間:0.58-0.90,P=0.0031)統計学的有意に減少することを示した。
また、無増悪生存期間(PFS)中央値もベクティビックス群4.7ヵ月(4.1~5.0ヵ月)に対してアービタックス群4.1ヵ月(3.1~4.7ヵ月)、ベクティビックス群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクが21%(ハザード比:0.79,95%信頼区間:0.64-0.97,P=0.0207)統計学的有意に減少することを示した。なお、奏効率(RR)はベクティビックス群23%に対してアービタックス群16%(P=0.114)を示し、両群間に統計学的有意な差は確認されなかった。
一方の安全性は、抗EGFR抗体薬で最も確認される治療関連有害事象(TRAE)である全グレードの皮膚障害はベクティビックス群89.7%に対してアービタックス群87.8%、両群間に統計学的有意な差は確認されなかった。統計学的有意な差が確認された治療関連有害事象(TRAE)はインフュージョンリアクション(IR)はアービタックス群に多くて8.5%(ベクティビックス群1.1%)、低マグネシウム血症はベクティビックス群に多くて47.0%(アービタックス群32.0%)の患者で確認された。
以上の統合解析の結果より、谷口浩也氏らは以下のように結論を述べている。”アバスチンの前治療歴があるKRAS野生型進行再発大腸がん患者さんでは、抗EGFR抗体薬としてアービタックスよりもベクティビックスのほうが、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)ともに改善する傾向があることを示しました。”
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