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進行性尿路上皮がんのDNA損傷応答・修復(DDR)の遺伝子変異は抗PD-1/PD-L1抗体薬の効果予測因子になり得る医学誌『Journal of Clinical Oncology』より

  • [公開日]2018.04.24
  • [最終更新日]2018.04.24

2018年2月28日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて進行性尿路上皮がん患者に対する抗PD-1/PD-L1抗体薬の臨床的ベネフィットを予測するマーカーとしてDNA損傷応答・修復(DDR)の遺伝子変異がその役割を担うかどうかを検証した試験の結果がMemorial Sloan Kettering Cancer Center・Min Yuen Teo氏らにより公表された。

本試験は、進行性尿路上皮がん患者に対してニボルマブ(商品名オプジーボ;以下オプジーボ)単剤療法を投与した2つの臨床試験NCT02553642NCT01928394)、アテゾリズマブ(商品名テセントリク;以下テセントリク)単剤療法を投与した1つの臨床試験(NCT02108652)、合計3つの臨床試験に登録された進行性尿路上皮がん患者(N=60人)を対象に、メモリアルスローンケタリングがんセンターが開発した400個以上のがん関連遺伝子を分析できる遺伝子検査『MSK-IMPACT』を実施し、主要評価項目としてオプジーボ、テセントリクなどの抗PD-1/PD-L1抗体薬の全奏効率ORR)がDNA損傷応答・修復(DDR)の遺伝子変異に関連しているかどうか、副次評価項目として無増悪生存期間PFS)、全生存期間OS)がDNA損傷応答・修復(DDR)の遺伝子変異に関連しているかどうかを検証した試験である。

本試験に登録された患者は、DNA損傷応答・修復(DDR)の遺伝子変異別に3つの群に分類されている。疾患の原因であることが明らかであるDNA損傷応答・修復(DDR)の遺伝子変異を示した群(N=15人)、臨床的意義不明なDNA損傷応答・修復(DDR)の遺伝子変異を示した群(N=13人)、DNA損傷応答・修復(DDR)の遺伝子変異を示さなかった群(N=32人)。この3群の患者背景はそれぞれ下記の通りである。

年齢中央値は、それぞれ66.0歳、68.1歳、67.3歳。性別は男性が93.3%、92.3%、68.8%。ECOG Performance Statusスコアは0が60.0%、0%、6%、残りの患者はECOG Performance Statusスコアが1。ヘモグロビン値10g/dl未満の患者は20.0%、7.7%、18.8%。転移個数中央値は2.0、2.0、2.0。前治療歴一次治療としてオプジーボが投与されていた患者73.3%、53.8%、78.1%。残りの患者はテセントリク。

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果、46.7%(N=28人)の患者で74種類のDNA損傷応答・修復(DDR)の遺伝子変異、25.0%(N=15人)の患者で24種類のDNA損傷応答・修復(DDR)の遺伝子変異が確認された。なお、変化が確認された遺伝子は多い順にATM(N=7人)、POLE(N=3人)、BRCA2(N=2人)、ERCC2(N=2人)、FANCA(N=2人)、MSH6(N=2人)である。

オプジーボ、またはテセントリクが投与された患者全体における全奏効率(ORR)は41.7%(N=25人)。そして、DNA損傷応答・修復(DDR)の遺伝子変異有無別の全奏効率(ORR)はDNA損傷応答・修復(DDR)の遺伝子変異を示した群67.9%に対して変化を示さなかった群18.8%、DNA損傷応答・修復(DDR)の遺伝子変異のあった群で統計学的有意に高かった(P<0.001)。なお、臨床的意義不明なDNA損傷応答・修復(DDR)の遺伝子変異のあった群の全奏効率(ORR)は53.9%、DNA損傷応答・修復(DDR)の遺伝子変異のなかった群は18.8%に対して、疾患の原因であることが明らかであるDNA損傷応答・修復(DDR)の遺伝子変異があった群は80%で統計学的有意に高かった(P<0.001)。

また、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)がDNA損傷応答・修復(DDR)の遺伝子変異に関連しているかどうかの検証結果は下記の通りである。無増悪生存期間(PFS)中央値は患者全体で4.5ヶ月、DNA損傷応答・修復(DDR)の遺伝子変異を示した群では未到達、臨床的意義不明なDNA損傷応答・修復(DDR)の遺伝子変異のあった群では15.7ヶ月、DNA損傷応答・修復(DDR)の遺伝子変異のなかった群は2.9ヶ月。DNA損傷応答・修復(DDR)の遺伝子変異のなかった群に比べて疾患の原因であることが明らかであるDNA損傷応答、修復遺伝子の変化を示した群では病勢進行または死亡のリスク(PFS)を80%統計学的有意に減少(ハザードリスク比:0.20,95%信頼区間:0.19-1.04,P=0.062)した。

全生存期間(OS)はDNA損傷応答・修復(DDR)の遺伝子変異を示した群では未到達、臨床的意義不明なDNA損傷応答・修復(DDR)の遺伝子変異のあった群では23.0ヶ月、DNA損傷応答・修復(DDR)の遺伝子変異のなかった群は9.3ヶ月。DNA損傷応答・修復(DDR)の遺伝子変異のなかった群に比べて疾患の原因であることが明らかであるDNA損傷応答・修復(DDR)の遺伝子変異を示した群では死亡のリスク(OS)を73%統計学的有意に減少(ハザードリスク比:0.27,95%信頼区間:0.10-0.73,P=0.001)した。

以上の結果より、Min Yuen Teo氏らは下記のように結論を述べている。”DNA損傷応答・修復(DDR)の遺伝子変異は、進行性尿路上皮がん患者に対する抗PD-1/PD-L1抗体薬の効果を予測するマーカーとして独立した因子になり得るでしょう。なお、本試験結果を臨床に応用するためにも、さらなる前向き試験、探索的試験を実施する必要があります。”

Alterations in DNA Damage Response and Repair Genes as Potential Marker of Clinical Benefit From PD-1/PD-L1 Blockade in Advanced Urothelial Cancers(DOI: 10.1200/JCO.2017.75.7740 Journal of Clinical Oncology – published online before print February 28, 2018)

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