・未治療のステージ1、2、3A非小細胞肺がんに対するオプジーボ単剤療法が病理学的奏効45%を示した
・術前化学療法としてのオプジーボ単剤療法は手術遅延に影響するような治療関連有害事象(TRAE)を発症しなかった
・術前化学療法としてのオプジーボ単剤療法の病理学的奏効は遺伝子変異量(TMB)に関係している
2018年4月16日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて未治療切除可能非小細胞肺がん患者に対する術前化学療法としての抗PD-1抗体薬であるニボルマブ(商品名オプジーボ;以下オプジーボ)単剤療法の安全性を検証した第II相試験(NCT02259621)の結果がJohns Hopkins Medicine・Patrick Forde氏らにより公表された。
本試験は、未治療のステージ1、2、3A非小細胞肺がん患者(N=21人)に対し術前化学療法として2週間に1回オプジーボ3mg/kgを投与し、初回投与より約4週間後に手術を実施し、主要評価項目として治療関連有害事象(TRAE)発症率、副次評価項目として残存腫瘍がん細胞10%未満として定義された病理学的奏効などを検証した単群非盲検下の第II相試験である。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は67歳(55-84歳)。性別は男性48%(N=10人)、女性52%(N=11人)。喫煙歴はなし14%(N=3人)、あり86%(N=18人)。肺がんの種類は腺がん62%(N=13人)、扁平上皮がん29%(N=6人)、その他10%(N=2人)。肺がんの進行具合はステージ1が19%(N=4人)、ステージ2が48%(N=10人)、ステージ3Aが33%(N=7人)。
以上のように本試験に登録された患者は62%が腺がんであり、81%が肺がんステージ2または3Aであり、そして現在または過去に喫煙歴のある患者が86%を占めていた。このような背景を有する患者に対して術前化学療法としてオプジーボ単剤療法を投与した結果は下記の通りである。
主要評価項目である治療関連有害事象(TRAE)は、全グレードで23%(N=5人,95%信頼区間:7.8-45.4%)の患者で発症し、グレード別の治療関連有害事象(TRAE)の内訳は下記の通りである。
グレード1または2の治療関連有害事象(TRAE)としては食欲不振/味覚異常14%(N=3人)、吐き気/下痢10%(N=2人)、肝機能異常5%(N=1人)、発熱5%(N=1人)、腹痛5%(N=1人)、インフュージョンリアクション5%(N=1人)、皮膚乾燥5%(N=1人)、せん妄5%(N=1人)。グレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)としては肺炎5%(N=1人)。
オプジーボ2回目投与後より手術までの期間中央値は18日(11-29日)、95%(N=21人)の患者で完全切除を達成し、治療関連有害事象(TRAE)による手術の遅れはなかった。
副次評価項目である病理学的奏効は評価可能であった20人の患者の内9人(45%、95%信頼区間:23%-68%)で確認され、3人の患者で病理学的完全奏効(pCR)を達成した。また、手術を実施した20人の患者の内8人(40%)の患者でオプジーボ単剤療法によりダウンステージに至っている。
また、本試験では病理学的奏効と遺伝子変異量(TMB)の関係性についても検証しており、治療前の腫瘍細胞の評価が可能であった12人の患者で検証されている。その結果、病理学的奏効の達成率は遺伝子変異量(TMB)の低い患者よりも高い患者で高率であることが示された( P=0.01 )。
以上の第II相試験の結果より、Patrick Forde氏らは以下のように結論を述べている。”非小細胞肺がん患者さんに対する術前化学療法としてのオプジーボ単剤療法は忍容性があり、手術開始期間に悪影響を与えず、45%の患者で病理学的奏効を示しました。また、遺伝子変異量(TMB)は抗PD-1抗体薬の病理学的奏効を予測できるマーカーになり得るでしょう。”
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