2018年5月12日(土)、国立がん研究センター中央病院にて
メラノーマを知る・学ぶ・聞く ~ミート・ザ・エキスパート!専門医に聞いてみよう~
が開催されました。
5月は世界的なメラノーマ啓発月間ということもあり、日本においても世界に合わせて患者さんやご家族に向けたセミナーが実施されました。
10万人に1~2人ともいわれる希少がんであるメラノーマのセミナーではありますが、80名を超える方が参加をしておりました。参加者はみな真剣に先生の話を聞き、先生方そのすべての参加者の質問に回答するという、とても熱のこもったセミナーでした。その熱のまま、予定時間を1時間オーバーし、4時間にわたるボリュームでしたので、要点を絞ってお伝えできればと思います。
主催:メラノーマ患者会「Over The Rainbow」
共催:国立がん研究センター 希少がんセンター
協賛:がん情報サイト「オンコロ」
目次
第1部 講演
講演① メラノーマの手術と術後補助化学療法
『メラノーマの手術と術後補助化学療法』
がん研究会有明病院 堤田 新 先生
・メラノーマという病気は予後が悪いというイメージが強いが、しっかりと手術を行えば十分治る可能性があるとのことで、転移のない方は基本的に手術となる。手術は過不足なく原発巣を切除することが重要である。
・リンパ節転移がある場合には、リンパ節郭清術が標準となる。
・メラノーマの場合、リンパ肥大がみられなくても、20~30%で転移が見つかるので注意が必要である。
・海外の試験でセンチネルリンパ節転移がある方で、経過観察とリンパ郭清群を比較して生存率を調べた試験が行われた。無作為化比較試験(MSLT-2試験)
・生存率はほぼ同じであったという結果であった。
・海外での結果ということもあり、慎重に考えなければならないが、今後は日本でもリンパ郭清やらなくなる可能性がでてくる。
術後の補助化学療法(アジュバント療法)について、
・これまで日本においては手術の後にインターフェロンβを使用することを明確なエビデンスがない状況の中で行われてきた。これについては、JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)にて試験が行われており、近いうちに結論が出る(JCOG 1309)。
・また、最近の研究ではダブラフェニブ+トラメチニブ(タフィンラー+メキニスト)や免疫チェックポイント阻害薬を手術後に使用することが、有効であることがわかってきた。
術前補助化学療法(ネオアジュバント療法)について、
・これまでは効果的な治療法はなく、海外含めてメラノーマでの検討はされてこなかった。
最近行われた海外試験
・切除が可能なステージ3,4のBRAF変異陽性の方を対象として、ダブラフェニブ+トラメチニブを手術前に8週間使用し、手術を行い、手術後に再度使用するという内容。
・この結果は有効であったため、すぐにではないが将来的に日本でも行われていく可能性がある。
講演② メラノーマの最新情報 2018年春
『メラノーマの最新情報 2018年春』
国立がん研究センター中央病院 山﨑 直也 先生
・日本人でBRAF遺伝子変異陽性の方は25~30%くらいである。
・BRAF陽性の場合にはダブラフェニブ+トラメチニブ(タフィンラー+メキニスト)が使用可能である。
・この場合、オプジーボやキイトルーダのような免疫チェックポイント阻害薬も選択肢となるが「現状はダブラフェニブ+トラメチニブを先に使うかな」とのこと。
・オプジーボとキイトルーダの違いについては、コーラで例えるとコカコーラとペプシの違いとのこと。
・免疫チェックポイント阻害薬にはCTLA-4阻害薬のヤーボイも使用可能だが、CheckMate064試験の結果より、まず先にオプジーボを使用してからヤーボイの順番のほうが良い結果になったとのこと。ただ、副作用も出やすいので注意が必要。
・また、一度オプジーボやキイトルーダが効かなかった方も、再度使用するというリチャレンジという方法もある。
治療の進歩、併用療法の時代が来ている。
・新たな治療法として、オプジーボとヤーボイの併用療法がもうまもなく承認!
・1+1が2以上になる可能性のある治療法である。ただし副作用は強く出てしまうようで、注意が必要とのこと。
・また、放射線+オプジーボで、通常メラノーマには効きにくい放射線が効果を発揮するケースや、放射線を照射した部位以外への効果も報告されている。
新たな治療として腫瘍溶解性ウィルスが注目である。
・T-VECやC-REV(HF10)と呼ばれるものである。
治験情報として、下記のものは実施中。(詳しい状況はオンコロにお問い合わせください。)
・オプジーボとLAG3抗体(免疫療法の一種)の治験
・T-VEC
・ダブラフェニブ+トラメチニブ(タフィンラー+メキニスト)+免疫チェックポイント阻害薬
第2部 ~ミート・ザ・エキスパート 専門医にきいてみよう~
パネリスト
国立がん研究センター中央病院 山﨑 直也 先生/高橋 聡 先生
がん研究会有明病院 堤田 新 先生
大阪国際がんセンター 爲政 大幾 先生
個人的にピックアップした質問を掲載します。
Q. かかとの手術後、インターフェロンβによる治療を1年くらいやっている。このまま続けてよいのでしょうか?
A. 週1回は多すぎると思う。多くは月2回程度であるが投与の仕方については日本内で定まってないのが現状。この治療にはエビデンスはないが、精神安定的につながるのならかまわないが・・・。
インターフェロンによる治療をなぜやるかについて・・・
やる場合は、原発巣の周囲にうつ。がんはリンパの流れを通って、リンパ管を経由し、リンパ節に転移する。そのためインターフェロンを打つことで洗い流すようなイメージの治療である。また、体を元気にするような目的も少し期待。副作用が少なく治療をしやすいのも理由である。
Q. 内科の医師から(メラノーマの疑いがあるので)すぐに検査しろと言われた。すぐに検査したほうがよいか。
A. 専門医を受診してください。痛い検査ではない、ダーモスコピーやれるところを確認してからのほうが良い。年配の皮膚科の開業医さんだと使えないかもしれない。
Q. ヤーボイのあとの治療について知りたい。
A. オプジーボ⇒ヤーボイの次だとしたら、オプジーボに戻るのも手である。オプジーボ+ヤーボイをやってみるのも手である。正解はないので、主治医相談になる。
選択肢としてはダカルバジン、免疫チェックポイント阻害薬のリチャレンジ、治験があるが、既治療の治験は現状ほとんどないのが現状である。
Q. 足にできたラノーマを切除した。1年に1回のPET検査を行っている。これで問題ないか。
A. 年に1度の検査は少ない気がする。PET検査過信している医師も多い。通常はCT検査を行い、怪しいところがあった場合にPET検査をするのがよい。
触診も大事、足ならなおさらである。メラノーマの場合は触診で異常に気付くケースは多い。
Q. オレンジやグレープジュースがメラノーマのリスクを高めるという話を聞いた。本当か?
A. 海外でのでのデータで確かにある。柑橘類に光線に感受性を上げる成分が入っているからというのがメカニズムであるが、白人と日本では違うし、気にして一切食べない生活をするのは微妙である。
Q. 現状のメラノーマの生存率は?
A. 全ステージを合わせると80%はあるが、まだ整理されていないのでわからない。予後が悪い疾患といわれるが、怖がりすぎる病気ではない。過去に疾患啓発も兼ねたキャンペーンを行ったことで怖い病気であるという認識が強まったと思われる。
免疫チェックポイント阻害薬の登場で、さらに予後は良くなっていくだろう。
終わりに
私はこれまでも多くの患者さん向けセミナーに参加してきましたが、ここまで患者さんのために時間を使い、親身になって先生が話をするセミナーを見たことがありません。昨年もこのメラノーマセミナーに参加しましたが、このようなセミナーが実現できた背景には、参加いただいた先生方、希少がんセンタースタッフの方、そして患者会をはじめとした患者さんやご家族の方の力があると思います。
オンコロがこのセミナーに関われたことはとても光栄に思います。
引き続きオンコロで貢献できることを実施していきたいと思います。来年はさらに規模を拡大していくと聞いております。この盛り上がりががん患者さんやご家族の励みになることを願います。
記事:濱崎 晋輔