・膵がん患者の約9%は生殖細胞系または体細胞系BRCA1/2遺伝子変異を有しており、BRCA1/2遺伝子変異陽性卵巣がんなどで臨床的意義が確認されているPARP阻害薬の治療効果が期待できる
・治療歴のあるBRCA1/2遺伝子変異陽性局所進行性または転移性膵がん患者に対するルカパリブ単剤療法は客観的奏効率(ORR)15.8%を示した
・ルカパリブ単剤療法により確認された治療関連有害事象(TRAE)は吐き気、貧血、倦怠感、腹水などであった
2018年5月16日、医学誌『 JCO Precision Oncology』にて治療歴のあるBRCA1/2遺伝子変異陽性局所進行性または転移性膵がん患者に対するポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤であるルカパリブ単剤療法の有効性を検証した第II相のRUCAPANC試験(NCT02042378)の結果がThe University of Texas MD Anderson Cancer Center・Rachna T. Shroff氏らにより公表された。
RUCAPANC試験とは、1または2レジメンの治療歴のあるBRCA1/2遺伝子変異陽性局所進行性または転移性膵がん患者(N=19人)に対して1日2回ルカパリブ600mg単剤を病勢進行するまで継続投与し、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)を検証した単群非盲検下の第II相試験である。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値57歳。性別は男性58%(N=11人)、女性42%(N=8人)。BRCA1/2遺伝子変異の内訳は、BRCA1遺伝子変異21%(N=4人)、BRCA2遺伝子変異79%(N=15人)、生殖細胞系BRCA1/2遺伝子変異陽性患者84%(N=16人)、体細胞系BRCA1/2遺伝子変異陽性患者16%(N=3人)。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は15.8%(N=3人)を示し、その奏効率の内訳は部分奏効(PR)2人、完全奏効(CR)1人であった。また、病勢安定(SD)、部分奏効(PR)、完全奏効(CR)のいずれかの状態が12週以上継続すると定義された病勢コントロール率(DCR)は31.6%(N=6人)を示した。
一方の安全性としては、ルカパリブ投与により確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は吐き気63.2%、貧血47.4%を示した。また、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は貧血31.6%、倦怠感15.8%、腹水15.8%を示した。
以上のRUCAPANC試験の結果よりRachna T. Shroff氏らは以下のように結論を述べている。”治療歴のあるBRCA1/2遺伝子変異陽性局所進行性または転移性膵がん患者さんに対してルカパリブ単剤療法は有効性を示し、副作用も管理可能でした。”
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