・LOXO-292の主な治療関連有害事象(TRAE)は倦怠感、下痢、呼吸困難であり、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は確認されなかった
・RET融合遺伝子陽性進行性固形がん患者に対するLOXO-292単剤療法の全奏効率(ORR)は69%を示した
・LOXO-292単剤療法は、マルチキナーゼ阻害薬治療歴、脳転移などの背景を有する患者に対しても良好な腫瘍縮小率を示した
2018年6月1日より5日までアメリカ合衆国・イリノイ州・シカゴで開催される米国癌治療学会議(ASCO 2018)にて、RET融合遺伝子陽性またはRET遺伝子変異を有する進行性固形がん患者に対するRET阻害薬であるLOXO-292の安全性を検証した第I相試験(NCT03157128)の結果がMemorial Sloan Kettering Cancer Center・Alexander Drilon氏らにより公表された。
本試験は、RET融合遺伝子陽性またはRET遺伝子変異を有する進行性固形がん患者(N=57)に対して1日1~2回LOXO-292 20mg~160mg単剤療法を投与し、主要評価項目として最大耐用量(MTD)、副次評価項目として全奏効率(ORR)などを検証した単群非盲検下の第I相試験である。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。がんの種類はRET融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(N=27人)、甲状腺乳頭がん(N=7人)、膵がん(N=1人)、RET遺伝子変異甲状腺髄様がん(N=20人)など。前治療歴としてマルチキナーゼ阻害薬による治療を受けた患者は67%、前治療歴中央値は1レジメン(1-4)。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。LOXO-292が投与された患者において容量制限毒性(DLT)の発現は確認されず、最大耐用量(MTD)には到達しなかった。なお、10%以上の患者で発症した主な治療関連有害事象(TRAE)は倦怠感16%、下痢16%、呼吸困難12%。治療関連有害事象(TRAE)の大半はグレード1または2であり、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は確認されなかった。
副次評価項目である評価可能であったRET融合遺伝子陽性患者(N=32人)における全奏効率(ORR)は69%(95%信頼区間:50%-84%,N=22人)を示した。なお、奏効を示した22人の内9人はマルチキナーゼ阻害薬ナイーブ症例、13人はマルチキナーゼ阻害薬治療歴のある症例であった。
また、がん種別の全奏効率(ORR)はRET融合遺伝子陽性非小細胞肺がん65%(N=17/26人)、甲状腺乳頭がん83%(N=5/6人)を示した。なお、非小細胞肺がんにおいてはKIF5B遺伝子の有無、脳転移の有無に関係なく奏効を示していた。甲状腺髄様がんにおける腫瘍縮小率は79%(N=11/14人)を示し、その内1人はRET V804M遺伝子変異、3人はマルチキナーゼ阻害薬の治療歴を有していた。
以上の第I相試験の結果よりAlexander Drilon氏らは以下のように結論を述べている。”RET融合遺伝子陽性またはRET遺伝子変異を有する進行性固形がん患者さんに対してLOXO-292は忍容性を示し、脳転移、マルチキナー阻害薬治療歴のある患者さんに対しても高い腫瘍縮小を示しました。”
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