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アンドロゲン受容体バリアント7(AR-V7)は転移性去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)の効果予測因子になる可能性が示唆される医学誌『JAMA Oncology』より

  • [公開日]2018.07.09
  • [最終更新日]2018.07.09
この記事の3つのポイント
・本試験は、アンドロゲン受容体阻害薬またはタキサン系抗がん剤の治療を受けた転移性去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)患者を対象に、AR-V7ステータスと治療薬の有効性を比較検証した多施設共同試験である
・本試験の結果、AR-V7陽性患者における全生存期間OS中央値はアンドロゲン受容体阻害薬群7.3ヶ月に対してタキサン系抗がん剤群14.3ヶ月、タキサン系抗がん剤群で死亡のリスクが38%減少した
・また、AR-V7陰性患者における全生存期間(OS)中央値はアンドロゲン受容体阻害薬群19.8ヶ月に対してタキサン系抗がん剤群12.8ヶ月、タキサン系抗がん剤群で死亡のリスクが67%増加した

2018年6月28日、医学誌『JAMA Oncology』にて転移性去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)における効果予測因子としての血中循環腫瘍細胞におけるアンドロゲン受容体バリアント7(AR-V7;以下AR-V7)の有効性を検証した試験の結果が Memorial Sloan Kettering Cancer Center・Howard I. Scher氏らにより公表された。

本試験は、二次治療以降の治療薬としてアンドロゲン受容体阻害薬またはタキサン系抗がん剤の治療を受けた転移性去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)患者(N=142人)を対象に、AR-V7ステータスとアンドロゲン受容体阻害薬(N=70人)またはタキサン系抗がん剤(N=72人)の全生存期間(OS)を比較検証した多施設共同試験である。

本試験において、アンドロゲン受容体阻害薬またはタキサン系抗がん剤治療前に血中循環腫瘍細胞のAR-V7ステータスが測定された患者背景はそれぞれ下記の通りである。年齢中央値はアンドロゲン受容体阻害薬群70.5歳(40-91歳)に対してタキサン系抗がん剤群70歳(48-85歳)。アルブミン値4g/dl(2.4-4.7g/dl)に対して4g/dl(2.4-4.7g/dl)。ヘモグロビン値11.9g/dl(7.1-14.8g/dl)に対して11.45g/dl(8.0-14.8g/dl)。 LDH値203U/L(101-1231U/L)に対して245U/L(152-1487U/L)。

PSA値30.3ng/mL(0.05-1412ng/mL)に対して122ng/mL(3.9-16275ng/mL)。アルカリフォスファターゼ値91.5U/L(44-1040U/L)に対して127U/L(49-1055U/L)。肝転移または肺転移ありは20.0%(N=14人)に対して31.9%(N=23人)。AR-V7陽性率20.0%(N=14人)に対して30.6%(N=22人)。総治療歴は2レジメン52.9%(N=37人)に対して20.8%(N=15人)、3レジメン27.1%(N=19人)に対して36.1%(N=26人)、4レジメン20.0%(N=14人)に対して43.1%(N=31人)。

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。AR-V7陽性患者における全生存期間(OS)中央値はアンドロゲン受容体阻害薬群7.3ヶ月に対してタキサン系抗がん剤群14.3ヶ月、タキサン系抗がん剤群で死亡のリスクが38%減少した(ハザード比:0.62,95%信頼区間:0.28-1.39,P=0.25)。

一方、AR-V7陰性患者における全生存期間(OS)中央値はアンドロゲン受容体阻害薬群19.8ヶ月に対してタキサン系抗がん剤群12.8ヶ月、タキサン系抗がん剤群で死亡のリスクが67%増加した(ハザード比:1.67,95%信頼区間:1.00-2.81,P=0.05)。

また、ハイリスクAR-V7陽性患者における全生存期間(OS)中央値はアンドロゲン受容体阻害薬群5.6ヶ月に対してタキサン系抗がん剤群14.3ヶ月、タキサン系抗がん剤群で死亡のリスクが65%減少した(ハザード比:0.35,95%信頼区間:0.14-0.88,P=0.03)。

一方、ハイリスクAR-V7陰性患者における全生存期間(OS)中央値はアンドロゲン受容体阻害薬群16.9ヶ月に対してタキサン系抗がん剤群9.7ヶ月、タキサン系抗がん剤群で死亡のリスクが138%増加した(ハザード比:2.38,95%信頼区間:1.12-5.06,P=0.02)。

以上の試験結果よりHoward I. Scher氏らは以下のように結論を述べている。”本試験により血中循環腫瘍細胞におけるAR-V7ステータスは去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)患者に対する効果予測因子になり得る可能性が示唆されました。”

Assessment of the Validity of Nuclear-Localized Androgen Receptor Splice Variant 7 in Circulating Tumor Cells as a Predictive Biomarker for Castration-Resistant Prostate Cancer(JAMA Oncol. Published online June 28, 2018. doi:10.1001/jamaoncol.2018.1621)

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