・再発進行卵巣がん患者対象のネクサバール+トポテカン併用療法の有効性を検証した試験
・プラセボ群と比較し、ネクサバール群が無増悪生存期間(PFS)を有意に延長
・卵巣がんの治療に血管新生阻害薬を併用することの有効性が示唆
2018年8月9日、医学誌『The Lancet Oncology』にてプラチナ系抗がん剤ベースの化学療法後に病勢進行または抵抗性を示した卵巣がん患者に対するキナーゼ阻害薬であり血管新生阻害薬でもあるソラフェニブ(商品名ネクサバール;以下ネクサバール)+トポテカン併用療法の有効性を比較検証した第II相のTRIAS試験(NCT01047891)の結果がCharité – Universitätsmedizin Berlin・Radoslav Chekerov氏らにより公表された。
TRIAS試験とは、プラチナ系抗がん剤ベースの化学療法後に病勢進行または抵抗性を示した卵巣がん患者(N=185人)に対して21日を1サイクルとして6日から15日目に1日2回ネクサバール400mg+1日から5日目にトポテカン1.25mg/kg併用療法を6サイクル投与後、メンテナンス療法として1日1回ネクサバール単剤療法を1年間投与する群(N=85人)、または21日を1サイクルとしてプラセボ+1日から5日目にトポテカン1.25mg/kg併用療法を6サイクル投与後、メンテナンス療法としてプラセボ単剤療法を1年間投与する群(N=89人)に1対1の割合で振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)などを比較検証した多施設共同二重盲検下の第II相試験である。
本試験の患者背景はネクサバール群、プラセボ群それぞれ下記の通りである。年齢中央値はネクサバール群59歳(31-78歳)に対してプラセボ群58歳(25-79歳)。ECOG Performance Statusはスコア0が54%(N=45人)に対して53%(N=47人)、スコア1が40%(N=33人)に対して43%(N=38人)、スコア2が4%(N=3人)に対して1%(N=1人)。
FIGO分類による進行期はステージIが0%に対して4%(N=4人)、ステージIIが8%(N=7人)に対して3%(N=3人)、ステージIIIが59%(N=49人)に対して61%(N=54人)、ステージIVが22%(N=18人)に対して22%(N=20人)。腹水の有無はあり36%(N=30人)に対して37%(N=33人)、なし58%(N=48人)に対して61%(N=54人)。
化学療法の前治療は1レジメン39%(N=32人)に対して45%(N=40人)、2レジメン46%(N=38人)に対して42%(N=37人)、3レジメン16%(N=13人)に対して13%(N=12人)。以上のように両群間における患者背景に大きな偏りはなかった。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はネクサバール群6.7ヶ月(95%信頼区間:5.8-7.6ヶ月)に対してプラセボ群4.4ヶ月(95%信頼区間:3.7-5.0ヶ月)、ネクサバール群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを40%統計学有意に減少(HR:0.60,95%信頼区間:0.43-0.83,P=0.0018)した。
副次評価項目である全生存期間(OS)中央値はネクサバール群17.1ヶ月(95%信頼区間:12.5-21.7ヶ月)に対してプラセボ群10.1ヶ月(95%信頼区間:7.7-12.5ヶ月)、ネクサバール群で死亡(OS)のリスクを35%統計学有意に減少(HR:0.65,95%信頼区間:0.45-0.93,P=0.017)した。
RECISTもしくはCA-125判定による客観的奏効率(ORR)はネクサバール群35%に対してプラセボ群18%(P=0.024)、奏効持続期間(DOR)中央値はネクサバール群21.0ヶ月(95%信頼区間:17.3-24.7ヶ月)に対してプラセボ群14.0ヶ月(95%信頼区間:8.2-19.8ヶ月)であった。
一方の安全性として、最も一般的なグレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)はネクサバール群、プラセボ群それぞれ下記の通りである。白血球減少症はネクサバール群69%(N=57人)に対してプラセボ群53%(N=47人)、好中球減少症55%(N=46人)に対して54%(N=48人)、血小板減少症28%(N=23人)に対して22%(N=20人)であった。
なお、プラセボ群に比べてネクサバール群で多く確認された主な治療関連有害事象(TRAE)は
グレード3の手足症候群13%(N=3人)に対して0%、脱毛症29%(N=24人)に対して13%(N=12人)であった。
以上のTRIAS試験の結果よりRadoslav Chekerov氏らは以下のような結論を述べている。”プラチナ抵抗性再発卵巣がん患者に対するネクサバール+トポテカン併用療法後のメンテナンス療法としてのネクサバール単剤療法は無増悪生存期間(PFS)を統計学有意に改善しました。そして、この結果より卵巣がんに対して化学療法に血管新生阻害薬を併用することで治療成績が良好になる可能性が示唆されました。”
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