・脳転移再発防止の目的とした全脳照射の有効性を検証した第Ⅲ相試験
・化学放射線療法±手術後のステージⅢの非小細胞肺がん患者が対象に実施された
・経過観察群と比較し、全脳照射群は統計学的優位に脳転移の発生率を減少
2018年8月10日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて化学放射線療法±手術後のステージ3非小細胞肺がん患者に対する脳転移再発予防を目的にした予防的全脳照射(Prophylactic Cranial Irradiation;以下PCI)療法の有効性を検証した第III相のNVALT-11/DLCRG-02試験の結果がMaastricht University Medical Center・Dirk De Ruysscher氏らにより公表された。
NVALT-11/DLCRG-02試験とは、化学放射線療法±手術後のステージ3非小細胞肺がん患者(N=175人)に対してPCIを実施する群(N=87人)、経過観察を実施する群(N=88人)に無作為に振り分け、主要評価項目として24ヶ月脳転移発生率、副次評価項目として全生存期間(OS)、治療関連有害事象(TRAE)発症率などを比較検証した第III相試験である。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。肺がんの種類はPCI群で腺がん31人、扁平上皮がん33人、大細胞がん19人、NSCLC-NOS3人に対して経過観察群でPCI群で腺がん41人、扁平上皮がん29人、大細胞がん13人、NSCLC-NOS5人。
WHO-Performance StatusはPCI群でスコア0が32人、スコア1が50人、スコア2が4人に対して経過観察群でスコア0が34人、スコア1が49人、スコア2が5人。臨床病期はPCI群でステージ3Aが41人、ステージ3Bが44人、不明が1人、経過観察群でステージ3Aが52人、ステージ3Bが36人、不明が0人。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である24ヶ月脳転移発生率はPCI群7.0%(N=6人)に対して経過観察群27.2%(N=24人)、PCI群で脳転移発生率は統計学有意に低かった(OR:4.96,95%信頼区間:1.83-15.7,P<0.001)。
また、脳転移発生までの期間中央値は両群間で未到達であったが、PCI群で統計学有意に改善した(HR:0.23,95%信頼区間:0.09-0.56,P=0 .0012)。なお、サブグループ解析により肺がんの種類、WHO-Performance Status、手術の有無など患者背景別の脳転移発生までの期間を検証したところ、患者背景による統計学有意な差は確認されなかった。
その他評価項目である全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)は下記の通りである。全生存期間(OS)中央値はPCI群24.2ヶ月(95%信頼区間:20.3-38.7ヶ月)に対して経過観察群21.9 ヶ月(95%信頼区間:18.1-33.7ヶ月)、PCI群で死亡(OS)のリスクを10%減少するも統計学有意な差は確認されなかった(HR:0.9,95%信頼区間:0.62-1.29,P=0.56)。
無増悪生存期間(PFS)中央値はPCI群12.3ヶ月(95%信頼区間:9.4-21.2ヶ月)に対して経過観察群11.5 ヶ月(95%信頼区間:7.8-15.8 ヶ月)、PCI群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを21%減少するも統計学有意な差は確認されなかった(HR:0.79,95%信頼区間:0.56-1.11,P=0.17)。
一方の安全性として、経過観察群に比べてPCI群で統計学有意に多く発症した治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。神経系有害事象(AE)としては記憶障害はPCI群26/86人に対して経過観察PCI群7/88人、認知障害はPCI群16/86人に対して経過観察PCI群3/88人。
非神経系有害事象(AE)としては脱毛症はPCI群36/86人に対して経過観察PCI群5/88人、疲労はPCI群55/86人に対して経過観察PCI群30/88人、頭痛はPCI群33/86人に対して経過観察PCI群12/88人であった。
以上のNVALT-11/DLCRG-02試験の結果よりDirk De Ruysscher氏らは以下のように結論を述べている。”化学放射線療法±手術後のステージ3非小細胞肺がん患者に対するPCIは、経過観察に比べて治療関連有害事象(TRAE)を増加させることなく脳転移発生率を統計学有意に減少させることが本試験より証明されました。”
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