・HER2陽性乳がん患者を対象とした2つの術前化学療法を比較検証した試験
・パクリタキセル+ハーセプチンとFEC療法+ハーセプチンの有効性を検証した
・FEC療法とパクリタキセル+ハーセプチンと比較し、有意差は確認されなかった
2018年9月6日、医学誌『JAMA Oncology』にてHER2陽性乳がん患者に対する術前化学療法の同時併用、順次併用の有効性を比較検証した第III相のThe ACOSOG Z1041(Alliance)試験(NCT00513292)の結果がThe University of Texas MD Anderson Cancer Center・Aman U. Buzdar氏らにより公表された。
本試験は、HER2陽性乳がん患者(N=280人)に対する術前化学療法としてパクリタキセル+トラスツズマブ(商品名ハーセプチン;以下ハーセプチン)併用療法後のシクロホスファミド+エピルビシン+フルオロウラシル(FEC)+ハーセプチン併用療法を投与する群(同時併用群)、またはFEC療法後のパクリタキセル+ハーセプチン併用療法を投与する群(順次併用群)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として病理学的完全奏効率(pCR rate)、無病生存率(DFS rate)、全生存率(OS rate)を比較検証した多施設共同の第III相試験である。
なお、各群の投与スケジュールは下記の通りである。同時併用群は、1週を1サイクルとしてパクリタキセル80mg/m2+ハーセプチン2mg/kg併用療法を12週間投与後、3週を1サイクルとしてシクロホスファミド500mg/m2+エピルビシン75mg/m2+フルオロウラシル500mg/m2 を4サイクル+1週を1サイクルとしてハーセプチン2mg/kgを12週間投与。同時併用群は、3週を1サイクルとしてシクロホスファミド500mg/m2+エピルビシン75mg/m2+フルオロウラシル500mg/m2 を4サイクル投与後、1週を1サイクルとしてパクリタキセル80mg/m2+ハーセプチン2mg/kgを12週間投与。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は50歳(28-76歳)。人種は白人82.9%(N=232人)、黒人10.3%(N=29人)、アジア人2.9%(N=8人)、アメリカインディアンまたはアラスカネイティブ1.4%(N=4人)、その他2.5%(N=7人)。TNM分類はT因子でT1またはT2、N因子は0が27.1%(N=76人。ホルモン受容体ステータスはエストロゲン受容体(ER)陰性かつプロゲステロン受容体(PR)陰性が40.0%(N=112人)。なお、両群間における患者背景に大きな偏りはなかった。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である病理学的完全奏効率(pCR rate)は同時併用群50.0%(N=71人,95%信頼区間:41.5%-58.5%)に対して順次併用群52.9%(N=73人,95%信頼区間:44.2%-61.5%)で統計学有意な差は確認されなかった。また、無病生存率(DFS rate)も全生存率(OS rate)も両群間における統計学有意な差は確認されず、順次併用群に対する同時併用のハザード比は無病生存率(DFS rate)で1.02(95%信頼区間:0.56-1.83,P=0.96)、全生存率(OS rate)で1.17(95%信頼区間:0.48-2.88,P=0.73)であった。
以上のACOSOG Z1041(Alliance)試験の結果よりAman U. Buzdar氏らは以下のように結論を述べている。”HER2陽性乳がん患者に対する術前化学療法としてのFEC療法+ハーセプチン同時併用療法は順次併用療法に対して病理学的完全奏効率(pCR rate)、無病生存率(DFS rate)、全生存率(OS rate)の全てで優越性は確認されませんでした。”
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