2018年2月5日、医学誌『Breast Cancer』にてホルモン療法後に病勢進行したホルモン受容体陽性HER2陰性の進行性/転移性乳がん患者に対するCDK4/6阻害薬であるパルボシクリブ(商品名イブランス;以下イブランス)の第III相のPALOMA-3試験の結果とリアルワールドデータの結果に違いがあるかどうかをレトロスペクティブに検証した試験の結果がSt. Antonius Hospital・Tam Binh V Bui氏らにより公表された。
本試験は、ホルモン療法後に病勢進行したホルモン受容体陽性HER2陰性の進行性/転移性乳がん患者(N=46人)に対して、PALOMA-3試験と同様の投与スケジュールである4週を1サイクルとして1~21日目に1日1回イブランス125㎎+ホルモン療法を併用し、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、治療関連有害事象(TRAE)による治療中止率に違いがあるかどうかを比較検証したレトロスペクティブ試験である。
本試験が実施された背景として、CDK4/6阻害薬であるイブランスはホルモン受容体陽性HER2陰性の進行性/転移性乳がんのファースト・イン・クラス (画期的新薬)であるが、臨床結果についてはまだまだ不足している。第III相のPALOMA-3試験でイブランス+フルベストラント併用療法は、プラセボ+フルベストラント併用療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を統計学有意に改善することが示されたが、この結果は臨床でも再現性があるかどうかを検証するため本試験が実施された。
本試験が登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値はリアルワールド群で67歳(35-85歳)に対してPALOMA-3試験群で57歳(30-88歳)。ECOG Performance Statusはリアルワールド群でスコア0-1が96%(N=44人)、スコア2が4%(N=2人)に対してPALOMA-3試験群でスコア0-1が100%(N=347人)。閉経ステータスはリアルワールド群で閉経前が7%(N=3人)、閉経後が85%(N=39人)に対してPALOMA-3試験群で閉経前が21%(N=72人)、閉経後が79%(N=275人)。
前ホルモン治療歴はリアルワールド群で1レジメンが43%(N=20人)、2レジメンが28%(N=13人)、3レジメン以上が28%(N=13人)に対してPALOMA-3試験群で1レジメンが46%(N=160人)、2レジメンが40%(N=140人)、3レジメン以上が14%(N=47人)。
以上の患者に対する本試験の追跡期間中央値13.0ヶ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はリアルワールド群10.0ヶ月(95%信頼区間:4.9-15.1ヶ月)に対してPALOMA-3試験群9.5ヶ月(95%信頼区間:9.2-11.0ヶ月)と同様の結果が示された。
また、リアルワールド群におけるPALOMA-3試験の適格基準を満たした患者(N=30人)の無増悪生存期間(PFS)中央値は11.0ヶ月(95%信頼区間:9.7-12.3ヶ月)に対して満たしてない患者(N=16人)は5.5ヶ月(95%信頼区間:4.7-6.4ヶ月)を示した。
もう1つの主要評価項目である治療関連有害事象(TRAE)による治療中止率はリアルワールド群4%(N=2人)に対してPALOMA-3試験群4%(N=14人)を示した。なお、治療期間中央値(DOT)はリアルワールド群222.5日(95%信頼区間:42-693日)に対してPALOMA-3試験群232日(95%信頼区間:1-481日)であった。
以上のレトロスペクティブ試験の結果よりSt. Antonius Hospital・Tam Binh V Bui氏らは以下のように結論を述べている。”ホルモン療法後に病勢進行したホルモン受容体陽性HER2陰性の進行性/転移性乳がん患者に対するCDK4/6阻害薬イブランスは、第III相試験の結果で確認された有効性、安全性を臨床でも示しました。”
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