2018年12月13日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)とそのバイオマーカーである免疫関連遺伝子発現(GEP;Gene-Expression Profile)、 遺伝子変異量(TMB;Tumor Mutational Burden)、PD-L1発現量の関連性を検証した第1相のKEYNOTE-028試験(NCT02054806)の結果がDana-Farber Cancer Institute・Patrick A. Ott氏らにより公表された。
KEYNOTE-028試験とは、PD-L1発現陽性の進行性固形がん患者(N=475人)に対して2週に1回キイトルーダ10mg/kg単剤療法を2年間、病勢進行、もしくは予期せぬ有害事象(AE)が発症するまで投与し、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、探索的評価項目として抗腫瘍効果と免疫関連遺伝子発現(GEP)、遺伝子変異量(TMB)、PD-L1発現率の関連性を検証した多施設共同非盲検下の第1b相試験である。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は59歳(18-87歳)。性別は男性59.2%(N=281人)。人種は白人60.2%(N=286人)、アジア人20.8%(N=99人)、不明14.1%(N=67人)、黒人4.2%(N=20人)、その他0.6%(N=3人)。ECOG Performance Statusはスコア0が34.5%(N=164人)、スコア1が63.8%(N=303人)、スコア2が0.2%(N=1人)。
前治療歴は0レジメンが8.4%(N=40人)、1レジメンが24.0%(N=114人)、2レジメンが22.5%(N=107人)、3レジメンが17.7%(N=84人)、4レジメンが8.8%(N=42人)、5レジメン以上が12.6%(N=60人)。TNM分類のM因子はステージMXが9.3%(N=44人)、ステージM0が13.5%(N=64人)、ステージM1が71.6%(N=340人)。探索的評価項目である免疫関連遺伝子発現(GEP)検査を受けた患者数は313人、遺伝子変異量(TMB)検査を受けた患者数は77人、PD-L1発現率検査を受けた患者数は198人。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である全患者群(N=471人)における客観的奏効率(ORR)は14%(95%信頼区間:11.0%-17.5%)、副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は2.2ヶ月(95%信頼区間:1.9-3.4ヶ月)、全生存期間(OS)中央値は11.3ヶ月(95%信頼区間:9.8-13.7ヶ月)をそれぞれ示した。
探索的評価項目である抗腫瘍効果と免疫関連遺伝子発現(GEP)の関連性は、免疫関連遺伝子発現(GEP)高率である患者は客観的奏効率(ORR)も高率(P=0.012)であり、無増悪生存期間(PFS)も改善(P=0.017)した。抗腫瘍効果と遺伝子変異量(TMB)の関連性は、遺伝子変異量(TMB)高率である患者は客観的奏効率(ORR)も高率(P=0.018)であり、無増悪生存期間(PFS)も改善(P=0.051)した。抗腫瘍効果とPD-L1発現率の関連性は、PD-L1発現高率である患者は客観的奏効率(ORR)も高率(P=0.018)であり、無増悪生存期間(PFS)も改善(P=0.005)した。
なお、各バイオマーカーの関係性については免疫関連遺伝子発現(GEP)とPD-L1発現率は強い相関性を示し(r=0.40,P<0.001)、免疫関連遺伝子発現(GEP)と遺伝子変異量(TMB)は弱い相関性を示し(r=0.29,P=0.007)、PD-L1発現率と遺伝子変異量(TMB)も弱い相関性を示した(r=0.23,P=0.082)。そして、注目すべきことは遺伝子変異量(TMB)高率かつ免疫関連遺伝子発現(GEP)高率またはPD-L1発現高率である患者はキイトルーダ単剤療法により深い奏効を達成していた。
以上のKEYNOTE-028試験の結果よりPatrick A. Ott氏らは以下のように結論を述べている。”免疫関連遺伝子発現(GEP)、 遺伝子変異量(TMB)、そしてPD-L1発現量は抗PD-1抗体薬キイトルーダの効果予測因子になり得る可能性が本試験より示唆されました。そして、これらバイオマーカーは単独、併用することで薬剤反応性を事前に予測することが可能になり得るでしょう。”
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