2019年4月19日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて再発性慢性リンパ性白血病患者に対する抗CD20モノクローナル抗体薬であるリツキシマブ(商品名リツキサン;以下リツキサン)+PI3K阻害薬であるイデラリシブ併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相試験(NCT01539512)の結果がWillamette Valley Cancer Institute and Research CenterのJeff P. Sharman氏らにより公表された。
本試験は、再発性慢性リンパ性白血病患者(N=220人)に対してリツキサン+1日2回イデラリシブ150mg併用療法を投与する群(N=110人)、またはリツキサン+プラセボ併用療法を投与する群(N=110人)に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存(PFS)、全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、安全性を比較検証した第3相試験である。
本試験が実施された背景として、慢性リンパ性白血病を発症する多くの患者は65歳以上であるが、そのような患者は臓器障害を有しており、化学療法の毒性に対する忍容性がない。以上の背景より、抗CD20モノクローナル抗体薬であるリツキサン+PI3K阻害薬であるイデラリシブ併用療法の有効性、安全性が本試験より比較検証された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。性別は男性65%。人種は白人90%。年齢中央値は71歳(47-92歳)。前治療歴中央値は3レジメン。診断時より試験開始までの期間中央値は8.5年(0.6-26.6年)。染色体異常はdel(17p)またはTP53遺伝子陽性は43.2%。なお、両群間で患者背景に大きな偏りはなかった。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はリツキサン+イデラリシブ併用群19.4ヶ月(95%信頼区間:12.3ヶ月-未到達)に対してリツキサン+プラセボ併用群6.5ヶ月(95%信頼区間:4.0-7.3ヶ月)を示した。
客観的奏効率(ORR)はリツキサン+イデラリシブ併用群83.6%(95%信頼区間:75.4%-90.0%)に対してリツキサン+プラセボ併用群15.5%(95%信頼区間:9.3%-23.6%)、奏効の内訳としてはリツキサン+イデラリシブ併用群で完全奏効(CR)0%、部分奏効(PR)83.6%、リツキサン+プラセボ併用群で完全奏効(CR)0%、部分奏効(PR)15.5%を示した。
また、奏効持続期間(DOR)中央値はリツキサン+イデラリシブ併用群未到達(95%信頼区間:12.0ヶ月-未到達)に対してリツキサン+プラセボ併用群6.2ヶ月(95%信頼区間:2.8-6.5ヶ月)を示した。
全生存期間(OS)中央値はリツキサン+イデラリシブ併用群40.6ヶ月(95%信頼区間:28.5-57.3ヶ月)に対してリツキサン+プラセボ併用群34.6ヶ月(95%信頼区間:16.0ヶ月-未到達)を示した。
一方の安全性として、全グレードの有害事象(AE)発症率はリツキサン+イデラリシブ併用群98.2%に対してリツキサン+プラセボ併用群98.1%、グレード3以上の有害事象(AE)発症率はリツキサン+イデラリシブ併用群73.6%に対してリツキサン+プラセボ併用群53.7%。全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率はリツキサン+イデラリシブ併用群55.5%に対してリツキサン+プラセボ併用群24.1%、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はリツキサン+イデラリシブ併用群32.7%に対してリツキサン+プラセボ併用群7.4%。なお、最も多くのリツキサン+イデラリシブ併用群の患者で確認された有害事象(AE)は発熱40.0%、倦怠感30.9%、下痢29.1%であった。
以上の第3相試験の結果よりJeff P. Sharman氏らは以下のように結論を述べている。”再発性慢性リンパ性白血病患者に対するリツキサン+イデラリシブ併用療法は、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を改善し、長期間投与しても忍容性に問題ありませんでした。”
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