・FIGO進行期分類ステージ3~4進行性卵巣がん患者が対象の第3相試験
・ファーストライン治療としてのトレバナニブ+パクリタキセル+カルボプラチン併用療法の有効性・安全性を検証
・プラセボ+パクリタキセル+カルボプラチン併用療法と比較して、無増悪生存期間を改善しなかった
2019年5月7日、医学誌『The Lancet Oncology』にて進行性卵巣がん患者に対するファーストライン治療としてのアンジオポエチン阻害薬であるトレバナニブ(AMG 386)+パクリタキセル+カルボプラチン併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のTRINOVA-3試験(NCT01493505)の結果がLeuven Cancer Institute・Ignace Vergote氏らにより公表された。
TRINOVA-3試験とは、FIGO進行期分類ステージ3~4進行性卵巣がん患者(N=1015人)に対するファーストライン治療として3週を1サイクルとしてパクリタキセル175mg/m2+カルボプラチンAUC5~6+1週を1サイクルとしてトレバナニブ15mg/kg併用療法を6サイクル投与し、維持療法としてトレバナニブ15mg/kg単剤療法を18ヶ月間投与する群(N=678人)、または3週を1サイクルとしてパクリタキセル175mg/m2+カルボプラチンAUC5~6+1週を1サイクルとしてプラセボ併用療法を6サイクル投与し、維持療法としてプラセボ単剤療法を18ヶ月間投与する群(N=337人)に2対1の割合で振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)、治療関連有害事象(TRAE)などを比較検証した国際多施設共同二重盲検下の第3相試験である。
本試験が実施された背景として、卵巣がんの治療薬として血管形成阻害薬は有望であることが期待されている。アンジオポエチン阻害薬であるトレバナニブはTie2受容体との相互作用により血管形成、血管リモデリング調節、そして血管形成阻害することにより抗腫瘍効果が期待されている。以上の背景より本試験が実施された。
本試験のフォローアップ期間中央値27.4ヶ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はトレバナニブ併用群15.9ヶ月(95%信頼区間:15.0-17.6ヶ月)に対してプラセボ併用群15.0ヶ月(95%信頼区間:12.6-16.1ヶ月)、トレバナニブ併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを7%減少するも統計学的有意な差は確認されなかった(HR:0.93,95%信頼区間:0.79-1.09,P=0.36)。
一方の安全性として、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はトレバナニブ併用群76%(N=512人)に対してプラセボ併用群71%(N=512人)の患者で確認された。最も多くの患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は好中球減少症でトレバナニブ併用群35%に対してプラセボ併用群38%、貧血でトレバナニブ併用群11%に対してプラセボ併用群12%、白血球減少症でトレバナニブ併用群12%に対してプラセボ併用群10%の患者で確認された。なお、重篤な有害事象(SAE)発症率はトレバナニブ併用群40%(N=269人)に対してプラセボ併用群31%(N=104人)の患者で確認された。
以上のTRINOVA-3試験の結果よりLeuven Cancer Institute・Ignace Vergote氏らは以下のように結論を述べている。”進行性卵巣がん患者に対するファーストライン治療としてのトレバナニブ+パクリタキセル+カルボプラチン併用療法は、無増悪生存期間(PFS)を改善しませんでした。一方、安全性プロファイルは既存の臨床試験で確認されているものと一致しておりました。”