5月29日、厚生労働省 中央社会保険医療協議会は、2つのがん遺伝子パネル検査の保険償還を認めた。
がんパネル検査とは、次世代シークエンサーなどの遺伝子解析技術を用い、遺伝子変異などを検出する検査のことである。
本検査にて遺伝子変異が検出された場合、その遺伝子変異に対する分子標的薬が有効となる可能性があり得る。ただし、その一方で、対応する分子標的薬等の使用については保険適応されていないものが多いという問題がある。
今回、昨年12月にて承認された「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」と「OncoGuide NCC オンコパネルシステム」について審議・了承された。
2つの遺伝子パネル検査が承認取得、一方、肺がん治療スキームは複雑に?
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自己負担額は3割負担で19万円程度、高額療養費制度にて8~10万円程度
今回、保険適応となった「NCCオンコパネル」は国立がん研究センターがシスメックス社と共同開発したパネル検査となり、がんに関連する126個を一度に調べることができる。2018年4月より、がんゲノム医療中核拠点病院を中心に先進医療として実施されていた。
一方「FoundationOne」はFDA(米国)では17の分子標的薬に対するコンパニオン診断薬であり、がんに関連する324個を一度に調べることができる。
両者の一度で調べることができる遺伝子数に違いはあるが、保険償還点数は原則56,000点(56万円)となり、これにはエキスパートパネルといった「担当医、がん専門医、病理医、ゲノム専門家や遺伝カウンセラーなどの複数の専門家による解析結果の意義づけと、治療法の提案を行う会議」も含まれる。
標準治療がない患者(終了が見込まれるものを含む)が対象
がん遺伝子パネル検査の保険適応となる患者は「標準治療がない固形がん患者又は局所進行若しくは転移が認められ標準治療が終了となった固形がん患者(終了が見込まれる者を含む。)」と定義され、この判断は関連学会のガイドライン等に基づくこととなる。
その他、検査結果により治療が可能な患者となるため、「全身状態及び臓器機能等から、本検査施行後に化学療法の適応となる可能性が高いと主治医が判断された者」という条件も付け加えられている。
なお、これらの検査の対象患者は、各々最大でも13,000人程度(計26,500人程度)と考えられている。
原則、がんゲノム医療中核拠点病院、がんゲノム医療連携病院にて実施
がん遺伝子検査は「がんゲノム医療中核拠点病院(11施設)」「がんゲノム医療連携病院(156施設)」「これらに準ずる病院」とされた。なお、ここでいう「これらに準じる病院」とは新設予定となる「がんゲノム医療拠点病院」が想定される。
・がんゲノム医療中核拠点病院は以下の通り
・がんゲノム医療連携病院はコチラ
遺伝子パネル検査結果の研究利用促進へ
がん遺伝子検査の保険償還条件として「遺伝子解析データや臨床情報等を、患者の同意に基づき、がんゲノム情報管理センター(C-CAT)に提出すること」が義務付けられた。(インフォームドコンセントの結果、同意を得られない場合も保険償還可能)
C-CATとは、国立がん研究センターが運営する「がんゲノム情報管理センター(Center for Cancer Genomics and Advanced Therapeutics」の略であり、2018年6月1日に開設された。その主な役割は「がんゲノム情報」や「がんゲノム医療に必要な知識」を構築することであり、これらの仕組みを活用して日本におけるがんゲノム医療を推進する。
今後、保険診療下で活発化されるであろう がん遺伝子解析結果を一か所に集約することにより、日本のがんゲノム研究のさらなる発展が期待される。
出典:国立がん研究センタープレスリリース(2018/6/1)
がんゲノム医療 ~現在、未来、その先へ~
(文;可知 健太)
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