・未治療の局所進行性膵がん患者が対象の第2相試験
・ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法、またはFOLFIRINOX併用療法の有効性・安全性を検証
・コンバージョン率、全生存期間ともに統計学的有意な差は確認されず
2019年9月27日より10月1日まで、スペイン/バルセロナで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2019)にて、未治療の局所進行性膵がん患者に対するゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法、またはFOLFIRINOX併用療法の有効性、安全性を比較検証した第2相のNEOLAP試験(NCT02125136)の結果がUniversity Hospital WuerzburgのVolker Kunzmann氏らにより公表された。
NEOLAP試験とは、未治療の局所進行性膵がん患者に対して導入療法としてゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法を2サイクル投与後、続けてゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法を2サイクル投与する群(N=64人)、またはFOLFIRINOX併用療法を4サイクル投与する群(N=66人)に1対1の割合で振り分け、主要評価項目としてコンバージョン率(切除が可能になる率)、副次評価項目として全生存期間(OS)、安全性などを比較検証した初の前向きオープンラベルランダム化の第2相試験である。
本試験が実施された背景として、局所進行性膵がん患者の約30%が導入療法として化学療法により治療が推奨されている。しかしながら、この治療として最適な化学療法レジメンは不明確である。そこで、本試験により未治療の局所進行性膵がん患者に対する化学療法としてゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法、またはFOLFIRINOX併用療法の有用性を比較検証する目的で本試験が開始された。
本試験の結果、主要評価項目であるコンバージョン率はゲムシタビン+ナブパクリタキセル群30.6%(95%信頼区間:19.6%-43.7%)に対してFOLFIRINOX群45.0%(95%信頼区間:32.1%-58.4%,OR:0.54,95%信頼区間:0.26 -1.13,P=0.135)を示した。
副次評価項目である全生存期間(OS)中央値はゲムシタビン+ナブパクリタキセル群17.2ヶ月に対してFOLFIRINOX群22.5ヶ月、FOLFIRINOX群で死亡(OS)のリスクを27%減少するも両群間で統計学的有意な差は確認されなかった(HR:0.73,95%信頼区間:0.42 -1.28,P=0.268)。
一方、コンバージョン達成有無別の全生存期間(OS)中央値はコンバージョンを達成した患者群27.4ヶ月(95%信頼区間:14.7ヶ月−未到達)に対してコンバージョン未達成の患者群14.2ヶ月(95%信頼区間:12.2-18.8ヶ月)、コンバージョンを達成した患者群で死亡(OS)リスクを55%統計学的有意に改善した(HR:0.45,95%信頼区間:0.26-0.78,P=0.0035)。
安全性としては、グレード3以上の有害事象(AE)発症率はゲムシタビン+ナブパクリタキセル群54.7%に対してFOLFIRINOX群53.0%を示した。
以上のNEOLAP試験の結果より、Volker Kunzmann氏らは以下のように結論を述べている。”未治療の局所進行性膵がん患者に対するFOLFIRINOX併用療法は、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法に比べて主要評価項目であるコンバージョン率、副次評価項目である全生存期間(OS)を統計学的有意に改善しませんでした。しかしながら、化学療法後にR0/R1切除を達成した患者の全生存期間(OS)は統計学的有意に改善することが示されたので、導入療法としての化学療法は今後の推奨されるべき治療になるでしょう。”
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