2019年9月27日より10月1日まで、スペイン/バルセロナで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2019)にて、IDH1変異陽性の胆管がん患者に対する変異IDH1に対する経口小分子標的阻害薬であるイボシデニブ(ivosidenib)単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のClarIDHy試験(NCT02989857)の結果がMemorial Sloan-Kettering Cancer CentreのGhassan K. Abou-Alfa氏らにより公表された。
ClarIDHy試験とは、IDH1変異陽性の胆管がん患者(N=185人)に対して1日1回イボシデニブ500mg単剤療法を投与する群、またはプラセボ療法を投与する群に2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)、全生存期間(OS)などを比較検証した第3相試験である。
本試験が実施された背景として、胆管がん患者の約15%はIDH1変異陽性であり、そのような患者は他の治療方法では限定的な効果しか示さない。以上の背景より、変異IDH1に対する経口小分子標的阻害薬であるイボシデニブの有用性を検証する目的で本試験が実施された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。
年齢中央値
62歳
性別
男性=68人
女性=117人
ECOG performance status
0または1
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。
主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はイボシデニブ群2.7ヶ月に対してプラセボ群1.4ヶ月、イボシデニブ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを63%統計学的有意に改善した(HR:0.37,95%信頼区間:0.25-0.54,P<0.001)。なお、 イボシデニブ群における6ヶ月無増悪生存率(PFS)は32.0%、12ヶ月無増悪生存率(PFS)は21.9%を示した。
副次評価項目である客観的奏効率(ORR)はイボシデニブ群2.4%に対してプラセボ群0%を示し、奏効の内訳はイボシデニブ群で部分奏効(PR)3人、病勢安定(SD)63人、プラセボ群で病勢安定(SD)17人であった。全生存期間(OS)中央値はイボシデニブ群10.8ヶ月に対してプラセボ群9.7ヶ月、イボシデニブ群で死亡(OS)のリスクを31%統計学的有意に改善した(HR:0.69,P=0.06)。
一方の安全性として、イボシデニブ群の15%以上の患者で確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は吐き気32.1%、下痢28.8%、疲労23.7%、咳19.2%、腹痛18.6%、腹水18.6%、食欲減退17.3%、貧血16.0%、嘔吐16.0%。また、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はイボシデニブ群46%に対してプラセボ群36%を示した。
以上のClarIDHy試験の結果よりGhassan K. Abou-Alfa氏らは以下のように結論を述べている。”IDH1変異陽性の胆管がん患者に対する変異IDH1に対する経口小分子標的阻害薬であるイボシデニブ単剤療法は、無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善し、全生存期間(OS)も良好な結果を示しました。”
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