・転移性去勢抵抗性前立腺がん患者が対象の第1相試験
・抗STEAP1抗体Vandortuzumab Vedotin単剤療法の有効性・安全性を検証
・2mg/kg以上の用量で良好な抗腫瘍効果を示した
2019年11月5日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて転移性去勢抵抗性前立腺がん患者に対する抗STEAP1抗体であるVandortuzumab Vedotin(DSTP3086S)単剤療法の有効性、安全性を検証した第1相試験の結果がMemorial Sloan Kettering Cancer CenterのDaniel C. Danilas氏らにより公表された。
本試験は、 転移性去勢抵抗性前立腺がん患者に対して1~3週を1サイクルとしてVandortuzumab Vedotin(DSTP3086S)0.3~2.8mg/kg単剤療法を投与し、主要評価項目として第2相試験推奨用量(RPIID)、副次評価項目として抗腫瘍効果などを検証した多施設共同の第1相試験である。
本試験が実施された背景として、去勢抵抗性前立腺がんに対する治療方法は近年アビラテロン、エンザルタミド、カバジタキセルをはじめ開発されている。しかしながら、これら治療方法は毒性により長期的な治療効果は限られている。以上の背景より、前立腺がん患者において多く発現が確認されているSTEAP1を標的にした、モノクローナル抗体であるVandortuzumab Vedotin(DSTP3086S)の有用性が本試験で検証された。
本試験に登録された3週を1サイクルとして投与された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は68歳(43-88歳)。ECOG Performance Statusはスコア0が30%、スコア1が69%、スコア2が1%。全治療歴はドセタキセルが56%、カバジタキセルが10%、アビラテロンが68%、エンザルタミドが45%。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。3週を1サイクルとして投与された患者の20%以上で確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は疲労56%、末梢神経障害51%、吐き気38%、便秘35%、食欲減退34%、下痢26%、嘔吐25%を示した。
また、3週を1サイクルとしてVandortuzumab Vedotin(DSTP3086S)2.25mg/kg、2.8mg/kgの用量による治療を受けた患者2人でグレード3の経アミ網炎の発現が確認された。なお、最大耐用量(MTD)は未到達であり、主要評価項目である第2相試験推奨用量(RPIID)は3週を1サイクルとしてVandortuzumab Vedotin(DSTP3086S)2.4mg/kgとして決定された。
副次評価項目である抗腫瘍効果(治療開始前ベースライン時点PSA値より50%以上の半減として定義)は14%(95%信頼区間:7%~24%)の患者で確認された。また、Vandortuzumab Vedotin(DSTP3086S)2mg/kg以上の用量で投与された患者における抗腫瘍効果は2.25mg/kg群(N=1/7)で14%(95%信頼区間:0%~58%)、2.4mg/kg群(N=5/39)で13%(95%信頼区間:4%~27%)、2.8mg/kg群(N=5/16)で31%(95%信頼区間:11%~59%)の患者で確認された。
以上の第1相試験の結果よりDaniel C. Danilas氏らは以下のように結論を述べている。”転移性去勢抵抗性前立腺がん患者に対する抗STEAP1抗体であるVandortuzumab Vedotin(DSTP3086S)単剤療法は2mg/kg以上の用量で良好な抗腫瘍効果を示し、忍容性も問題ないため、第2相試験推奨用量(RPIID)は3週を1サイクルとしてVandortuzumab Vedotin(DSTP3086S)2.4mg/kgとして決定されました。”
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