・軟髄膜転移を有するEGFR陽性進行性非小細胞肺がん患者が対象の第1相試験
・タグリッソ単剤療法の有効性・安全性を比較検証
・客観的奏効率は62%、奏効持続期間の中央値は15.2ヶ月を示した
2019年12月6日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて軟髄膜転移を有するEGFR陽性進行性非小細胞肺がん患者に対するEGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるオシメルチニブ(商品名タグリッソ;以下タグリッソ)単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第1相のThe BLOOM試(NCT02228369)の結果がNational Taiwan University HospitalのJames C.H. Yang氏らにより公表された。
The BLOOM試験とは、軟髄膜転移を有するEGFR陽性非小細胞肺がん患者(N=41人,コーホート1=21人,コーホート2(T790M陽性)=20人)に対して1日1回タグリッソ160mg単剤療法を投与し、主要評価項目として安全性、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)、奏効持続期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)などを検証した第1相試験である。
本試験が開始された背景として、軟髄膜転移は進行性非小細胞肺がんの約3%~4%の患者で確認され、特にEGFR陽性進行性非小細胞肺がんでは約9%の患者で確認される。軟髄膜転移を有する非小細胞肺がんの予後は不良であり、全生存期間(OS)中央値は3~10ヶ月程度である。以上の背景より、軟髄膜転移を有するEGFR陽性進行性非小細胞肺がんの治療選択肢としての可能性を検証するため本試験が開始された。
本試験に登録された41人の患者背景は下記の通りである。年齢中央値は59歳(44‐75歳)。性別は男性29%、女性71%。人種はアジア人100%。ECOG Performance Statusはスコア0が2%、スコア1が46%、スコア2が51%。EGFRチロシンキナーゼ阻害薬の前治療歴はゲフィチニブ76%、エルロチニブ17%、アファチニブ5%、ダコミチニブ2%。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。客観的奏効率(ORR)は62%(95%信頼区間:45%‐78%)、奏効持続期間(DOR)中央値は15.2ヶ月(95%信頼区間:7.5‐17.5ヶ月)を示した。治験医師評価による無増悪生存期間(PFS)中央値は8.6ヶ月(95%信頼区間:5.4‐13.7ヶ月)、全生存期間(OS)中央値は11.0ヶ月(95%信頼区間:8.0‐18.0ヶ月)を示した。
一方の安全性として、既存の臨床試験で確認されているタグリッソの安全性プロファイルと一致しており、最も多くの患者で確認されたグレード3以上の有害事象(AE)は下記の通りである。吸引性肺炎10%、肺炎5%、貧血5%を示した。
以上のThe BLOOM試の結果よりJames C.H. Yang氏らは以下のように結論を述べている。”軟髄膜転移を有するEGFR陽性進行性非小細胞肺がん患者に対するEGFRチロシンキナーゼ阻害薬タグリッソ単剤療法は、忍容性に問題なく、良好な抗腫瘍効果を示しました。”
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