・切除可能なHER2陽性食道腺がん患者が対象の第2相試験
・術前化学療法としてのハーセプチン+パージェタ+化学放射線療法の忍容性を検証
・feasibilityは良好であり、抗腫瘍効果も期待できる結果に
2019年12月6日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて切除可能なHER2陽性食道腺がん患者に対する術前化学療法として、抗HER2モノクローナル抗体であるトラスツズマブ(商品名ハーセプチン;以下ハーセプチン)+ペルツズマブ(商品名パージェタ;以下パージェタ)+化学放射線療法の忍容性を検証した第2相のTRAP試験(NCT01196390)の結果がAmsterdam University Medical CenterのCharlotte I. Stroes氏らにより公表された。
TRAP試験とは、切除可能なHER2陽性食道腺がん患者に対して3週を1サイクルとしてハーセプチン2~6mg/kg+パージェタ840mg+カルボプラチンAUC2+パクリタキセル50mg/m2+放射線41.4Gy併用療法を投与し、投与開始14週後に手術を実施し、主要評価項目として80%以上のハーセプチン+パージェタ併用療法の治療完遂率として定義したfeasibilityを検証した第2相試験である。
本試験が実施された背景として、術前化学放射線療法による治療を受けた切除可能な食道腺がんの全生存期間(OS)中央値は25ヶ月程度まで改善しているが、以前として予後が不良である。食道腺がんのHER2発現率は約15%~43%を示しており、抗HER2ヒト化モノクローナル抗体の有用性が期待できる、以上の背景より、本試験が開始された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は63歳(44‐78歳)。性別は男性83%(N=33人)、女性17%(N=7人)。HERステータスはHER2陽性27%(N=11人)、HER3陽性73%(N=29人)。ECOG Performance Statusはスコア0が83%(N=33人)、スコア1が17%(N=7人)。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目であるfeasibility達成率は83%(N=33人)を示した。なお、ハーセプチン、パージェタのいずれかまたは両剤の治療中止理由は左室駆出率の悪化が3人、患者希望が3人、死亡が1人である。
また、最も多くの患者で確認された全グレードの有害事象(AE)は疲労76%、下痢73%、吐き気70%であった。また、グレード3以上の有害事象(AE)発症率は48%を示し、最も多くの患者で確認されたグレード3以上の有害事象(AE)は下痢20%、嚥下障害18%であった。
一方の有効性として、フォローアップ期間中央値32.1ヵ月時点における無増悪生存期間(PFS)中央値、全生存期間(OS)中央値はいずれも未到達であった。なお、1年無増悪生存率(PFS)、3年無増悪生存率(PFS)はそれぞれ82.5%、72.3%、1年全生存率(OS)、3年全生存率(OS)はそれぞれ90.0%、71.3%を示した。
以上のTRAP試験の結果よりCharlotte I. Stroes氏らは以下のように結論を述べている。”切除可能なHER2陽性食道腺がん患者に対する術前化学療法として、抗HER2モノクローナル抗体ハーセプチン+パージェタ+化学放射線療法は、feasibilityが良好であり、抗腫瘍効果を期待できる結果でした。”
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