・未治療の早期トリプルネガティブ乳がん患者が対象の第3相試験
・術前化学療法としてのキイトルーダ+パクリタキセル+カルボプラチン併用療法の有効性・安全性を比較検証
・病理学的完全寛解率(pCR;ypT0/Tis ypN0)は、キイトルーダ群で13.6%有意に改善
2020年2月27日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて未治療の早期トリプルネガティブ乳がん患者に対する術前化学療法としての抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)+パクリタキセル+カルボプラチン併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のMK-3475-522/KEYNOTE-522試験(NCT03036488)の結果がImperial College LondonのPeter Schmid氏らにより公表された。
本試験は、未治療の早期トリプルネガティブ乳がん患者に対する術前化学療法として3週を1サイクルとしてキイトルーダ200mg+パクリタキセル+カルボプラチン併用療法を4サイクル投与後、3週を1サイクルとしてキイトルーダ200mg+エピルビシン+シクロホスファミド併用療法を4サイクル投与する群、または3週を1サイクルとしてプラセボ+パクリタキセル+カルボプラチン併用療法を4サイクル投与後、3週を1サイクルとしてプラセボ+エピルビシン+シクロホスファミド併用療法を4サイクル投与する群に2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として病理学的完全寛解率(pCR)、無イベント生存期間(EFS)を比較検証した二重盲検下の第3相試験である。
本試験が開始された背景として、第1b相のKEYNOTE-173試験にて局所進行性トリプルネガティブ乳がん患者に対する術前化学療法としてのキイトルーダ+化学療法は、重篤な有害事象(SAE)を発症させることなく良好的な抗腫瘍効果を発揮させることが明らかになっている。以上の背景より、第3相のMK-3475-522/KEYNOTE-522試験にて未治療の早期トリプルネガティブ乳がん患者に対する術前化学療法としてのキイトルーダ+化学療法の有用性が本試験にて検証された。
本試験に登録されたキイトルーダ群784人、プラセボ群390人のそれぞれの患者背景は下記の通りである。
年齢中央値
キイトルーダ群=49歳(22‐80歳)
プラセボ群=48歳(24‐79歳)
閉経ステータス
キイトルーダ群=閉経前 55.9%、閉経後 44.0%
プラセボ群=閉経前 56.7%、閉経後 43.3%
PD-L1ステータス
キイトルーダ群=陽性 83.7%
プラセボ群=陽性 81.3%
腫瘍ステージ
キイトルーダ群=T1/T2 74.0%、T3/T4 26.0%
プラセボ群=T1/T2 74.4%、T3/T4 25.6%
リンパ節転移の有無
キイトルーダ群=陽性 51.7%
プラセボ群=陽性 51.3%
進行病期
キイトルーダ群=ステージII 75.3%、ステージIII 24.7%
プラセボ群=ステージII 74.6%、ステージIII 25.1%
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である病理学的完全寛解率(pCR;ypT0/Tis ypN0=原発巣と腋窩リンパ節の浸潤がん消失)は、キイトルーダ群64.8%(95%信頼区間:59.9%‐69.5%)に対してプラセボ群51.2%(95%信頼区間:44.1%‐58.3%)、キイトルーダ群で13.6%(95%信頼区間:5.4%‐21.8%,P<0.001)統計学的有意に改善した。
また、病理学的完全寛解率(pCR;ypT0 ypN0=原発巣と腋窩リンパ節の浸潤・非浸潤を含めすべてのがん消失)は、キイトルーダ群59.9%(95%信頼区間:54.9%‐64.7%)に対してプラセボ群45.3%(95%信頼区間:38.3%‐52.4%)、キイトルーダ群で14.5%(95%信頼区間:6.2%‐22.7%)高率であった。
病理学的完全寛解率(pCR;ypT0/Tis=原発巣のみ浸潤がん消失)はキイトルーダ群68.6%(95%信頼区間:63.8%‐73.1%)に対してプラセボ群53.7%(95%信頼区間:46.6%‐60.8%)、キイトルーダ群で14.8%(95%信頼区間:6.8%‐23.0%)高率であった。
もう1つの主要評価項目である18ヶ月無イベント生存率(EFS)はキイトルーダ群91.3%(95%信頼区間:88.8%‐93.3%)に対してプラセボ群85.3%(95%信頼区間:80.3%‐89.1%)、キイトルーダ群で病勢進行、局所/遠隔再発、二次がん等のイベント発生により死亡リスクを37%(HR:0.63,95%信頼区間:0.43‐0.93)減少した。
一方の安全性として、全グレードの有害事象(AE)発症率はキイトルーダ群99.5%に対してプラセボ群100.0%、グレード3以上の有害事象(AE)発症率はキイトルーダ群81.0%に対してプラセボ群75.8%を示した。また、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率はキイトルーダ群99.0%に対してプラセボ群99.7%、キイトルーダ群で20%以上の患者に確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。吐き気62.7%、脱毛60.3%、貧血55.1%、好中球減少症46.7%、疲労41.1%、下痢29.4%、ALT上昇25.5%、無力症24.5%、便秘23.7%、好中球数減少23.7%、皮膚障害21.8%。
以上のMK-3475-522/KEYNOTE-522試験の結果よりPeter Schmid氏らは以下のように結論を述べている。”未治療の早期トリプルネガティブ乳がん患者に対する術前化学療法としての抗PD-1抗体薬キイトルーダ+パクリタキセル+カルボプラチン併用療法は、プラセボ群に比べて病理学的完全寛解率(pCR)を統計学的有意に改善することを示しました。”