・プラチナ製剤感受性のある再発卵巣がん患者が対象の第3相試験
・オラパリブ単剤とオラパリブ+セジラニブ併用療法の有効性・安全性を検証
・全患者のPFS延長は示さなかったが、BRCA遺伝子変異陽性患者ではPFSを有意に延長
2020年5月29日~31日、バーチャルミーティングで開催される米国臨床腫瘍学会(ASCO 2020)にてプラチナ製剤感受性のある再発卵巣がん患者に対する経口PARP阻害薬であるオラパリブ(商品名リムパーザ;以下オラパリブ)+VEGFR1/2/3阻害薬であるセジラニブ併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のNRG Oncology GY004試験(NCT02446600)の結果がDana-Farber Cancer InstituteのJoyce F. Liu氏らにより公表された。
NRG Oncology GY004試験とは、プラチナ製剤感受性のある再発卵巣がん患者を1日2回オラパリブ300mg単剤療法を投与する群(N=189人)、または1日2回オラパリブ200mg+1日1回セジラニブ 30mg併用療法を投与する群(N=189人)、またはプラチナ系ベース化学療法を投与する群(N=187人)に1対1対1の割合で振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、安全性などを比較検証した非盲検下第3相試験である。
本試験が開始された背景として、PARP阻害薬とVEGFR1/2/3阻害薬の併用は、低酸素による相同組換えを抑制する点、VEGFR3阻害により直接的にBRCA1およびRAD51の発現を低下させる点、PARP1ノックアウトマウスで血管新生が低下する点の3つ理由より相乗効果の可能性が示唆されている。
本試験に登録された患者の年齢はオラパリブ群で40-70歳が73.3%、オラパリブ+セジラニブ群で40-70歳が72.0%、化学療法群で40-70歳が73.3%。人種はオラパリブ群で白人85.2%、黒人3.7%、オラパリブ+セジラニブ群で白人86.2%、黒人4.2%、化学療法群で白人87.7%、黒人3.2%。前治療歴はオラパリブ群で1レジメン64.6%、2レジメン28.0%、3レジメン以上7.4%、オラパリブ+セジラニブ群で1レジメン64.6%、2レジメン28.6%、3レジメン以上6.9%、化学療法群で1レジメン66.8%、2レジメン24.6%、3レジメン以上8.6%。血管新生阻害薬の治療歴はオラパリブ群であり8.5%、オラパリブ+セジラニブ群であり9.0%、化学療法群であり8.0%。BRCA遺伝子変異ステータスはオラパリブ群で陽性23.8%、オラパリブ+セジラニブ群で陽性23.8%、化学療法群で陽性23.5%。
本試験の主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はオラパリブ群8.2ヶ月、オラパリブ+セジラニブ群10.4ヶ月、化学療法群10.3ヶ月、化学療法群に比べてオラパリブ+セジラニブ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを14.4%(95%信頼区間:0.663−1.105,P=0.077)減少するも統計学的有意な差は確認されなかった。
副次評価項目である客観的奏効率(ORR)はムパーザ群で52.4%、オラパリブ+セジラニブ群で69.4%、化学療法群で71.3%を示した。
BRCA遺伝子変異ステータス別の無増悪生存期間(PFS)は下記の通りである。BRCA遺伝子変異陽性の無増悪生存期間(PFS)中央値はオラパリブ群12.7ヶ月、オラパリブ+セジラニブ群18ヶ月、化学療法群10.5ヶ月に対して、BRCA遺伝子変異陰性ではオラパリブ群6.6ヶ月、オラパリブ+セジラニブ群8.9ヶ月、化学療法群9.7ヶ月を示した。
一方の安全性として、オラパリブ+セジラニブ群で最も多くの患者で確認された治療関連有害事象(TRAE)は悪心、疲労、下痢であった。
以上のNRG Oncology GY004試験の結果よりJoyce F. Liu氏らは「プラチナ製剤感受性のある再発卵巣がん患者に対する経口PARP阻害薬オラパリブ+VEGFR1/2/3阻害薬セジラニブ併用療法は、化学療法に比べて無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)で統計学的有意な差は確認されませんでしたが、ほぼ同等の効果を示しました。また、BRCA遺伝子変異陽性の患者に対してはオラパリブ単剤、オラパリブ+セジラニブ併用療法で顕著な有効性が確認されました」と結論を述べている。