8月26日、中外製薬株式会社は同社独自の抗体エンジニアリング技術「Switch-Ig」を用いた世界初のスイッチ抗体「STA551」に関する非臨床研究の成果が米国癌学会(AACR)発行のジャーナル「Cancer Discovery」に掲載されたと発表した。
STA551は、腫瘍組織に多く存在するアデノシン3リン酸(ATP)をスイッチ分子として認識して活性化することで、抗原であるCD137に結合する。STA551はATP依存的であり、ATPが存在しない環境では活性化しない。このコンセプト通りに作用することを複数のがん細胞株を移植した8種類のマウスモデルで確認し、2020年3月からは第1相臨床試験を実施している。
今回発表された非臨床研究でのマウスモデルにおける安全性は、従来のCD137アゴニスト抗体では全身に誘発される免疫反応がSTA551では軽減したことと、毒性試験において容認性が認められたという。
同社の上席執行役員・研究、トランスレーショナルリサーチ統括の岡部尚文氏は、「当社が開発したSwitch-Igを適用し、初めての臨床開発プロジェクトとなったSTA551の基礎研究の成果がCancer Discovery誌に掲載されたことを大変嬉しく思います。今回の論文掲載は、STA551自身の非臨床成績だけでなく、『病態組織に特異的に存在する分子(スイッチ分子)の存在下でのみ抗原に結合する』というスイッチ抗体が有するコンセプトも含め高く評価されたものと考えています」と述べるとともに、「中外製薬の強みを体現する抗体エンジニアリング技術は、従来の抗体医薬品での課題を解決するだけでなく、モダリティとしての抗体医薬品の可能性をさらに広げていけるものと確信しています。現在実施中の第1相臨床試験で、STA551がより良い安全性プロファイルと抗腫瘍効果を示し、患者さんの治療に貢献できる薬剤となることを大いに期待しています」と述べている。
Switch-Igとは
抗体の疾患部位特異性を高める技術。従来の抗体は疾患部位に特異的ではなく、正常組織でも標的抗原と結合し、副作用が生じることがあったが、Switch-Igは疾患部位で特異的に高濃度に発現する分子(スイッチ分子)が存在することで標的抗原に結合するため、正常組織で生じる安全性上の問題や血漿中動態悪化の回避につながることが期待される。
参照元:
中外製薬株式会社 ニュースリリース
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