2020年8月27日、医学誌『The New England Journal of Medicine(NEJM)』にてRET遺伝子変異を有する甲状腺がん患者に対するRET阻害薬であるSelpercatinib(LOXO-252)単剤療法の有効性、安全性を検証した試験の第1/2相のLIBRETTO-001結果(NCT03157128)がMassachusetts General HospitalのLori J. Wirth氏らにより公表された。
本試験は、バンデタニブ、カボザンチニブでの治療歴のあるRET遺伝子変異陽性甲状腺髄様がん(N=55人)、未治療のRET遺伝子変異陽性甲状腺髄様がん(N=88人)、治療歴のあるRET融合遺伝子陽性甲状腺がん(N=19人)患者に対してSelpercatinib単剤療法を投与し、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)などを検証した第1/2相試験である。
甲状腺髄様がんの約70%の患者でRET遺伝子変異は確認されており、RET融合遺伝子変異は他の甲状腺がんでは稀である。RET遺伝子変異を有する甲状腺がん患者におけるRET阻害薬の有用性は不明である。以上の背景より、RET阻害薬であるSelpercatinib単剤療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験の結果、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は治療歴のあるRET遺伝子変異陽性甲状腺髄様がん群で69%(95%信頼区間:55%-81%)、未治療のRET遺伝子変異陽性甲状腺髄様がん群で73%(95%信頼区間:62%-82%)、治療歴のあるRET融合遺伝子陽性甲状腺がん群で79%(95%信頼区間:54%-94%)を示した。
副次評価項目である1年無増悪生存率(PFS)は治療歴のあるRET遺伝子変異陽性甲状腺髄様がん群で82%(95%信頼区間:69%-90%)、未治療のRET遺伝子変異陽性甲状腺髄様がん群で92%(95%信頼区間:82%-97%)、治療歴のあるRET融合遺伝子陽性甲状腺がん群で64%(95%信頼区間:37%-82%)を示した。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3以上の有害事象(AE)は高血圧21%、アラニンアミノトランスフェラーゼ上昇11%、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ上昇9%、低ナトリウム血症8%、下痢6%。 なお、治療関連有害事象(TRAE)による治療中止率は2%を示した。
以上のLIBRETTO-001試験の結果よりLori J. Wirth氏らは「RET遺伝子変異を有する甲状腺がん患者に対するRET阻害薬Selpercatinib単剤療法は良好な抗腫瘍効果を示し、グレードの高い有害事象(AE)発症率も低率で忍容性に問題ありませんでした」と結論を述べている。
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