・完全切除後の肺高悪性度神経内分泌がん患者が対象の第3相試験
・イリノテカン+シスプラチン併用療法の有効性・安全性を比較検証
・無再発生存率は69.0%で、エトポシド+シスプラチン併用群に対して有意差を認めず
2020年11月2日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて完全切除後の肺高悪性度神経内分泌がん(HGNEC)の術後化学療法として標準治療であるエトポシド+シスプラチン併用療法に対する、イリノテカン+シスプラチン併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相試験(jRCTs031180216)の結果が静岡県立静岡がんセンターの釼持広知氏らにより公表された。
本試験は、完全切除後の肺高悪性度神経内分泌がん(HGNEC)に対する術後化学療法としての3週を1サイクルとして1~3日目にエトポシド100mg/m2+1日目にシスプラチン80mg/m2併用療法を最大4サイクル投与する群(N=111人)、または4週を1サイクルとして1、8、15日目にイリノテカン60mg/m2+1日目にシスプラチン60mg/m2併用療法を最大4サイクル投与する群(N=110人)に無作為に振り分け、主要評価項目として無再発生存期間(RFS)を比較検証した国内多施設共同ランダム化の第3相試験である。
本試験が開始された背景として、国内第3相試験にて進展型小細胞肺がん患者に対するイリノテカン+シスプラチン併用療法はエトポシド+シスプラチン併用療法に対して優越性を示している。しかしながら、米国をはじめ他の国では進展型小細胞肺がん患者に対するイリノテカン+シスプラチン併用療法のエトポシド+シスプラチン併用療法に対する優越性は示されていない。以上の背景より、完全切除後の肺高悪性度神経内分泌がん(HGNEC)に対する術後化学療法としてのエトポシド+シスプラチン併用療法、イリノテカン+シスプラチン併用療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験のフォローアップ期間中央値24.1ヵ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である無再発生存率(RFS)はエトポシド+シスプラチン併用群65.4%に対してイリノテカン+シスプラチン併用群69.0%(HR:1.076、95%信頼区間:0.666-1.738、P=0.619)を示した。
一方の安全性として、エトポシド+シスプラチン併用群で最も多くの患者で確認されたグレード3~4の有害事象(AE)は下記の通りである。発熱性好中球減少症はエトポシド+シスプラチン併用群20%に対してイリノテカン+シスプラチン併用群4%、好中球減少症は97%に対して36%。
一方、イリノテカン+シスプラチン併用群で最も多くの患者で確認されたグレード3~4の有害事象(AE)は下記の通りである。食欲不振はエトポシド+シスプラチン併用群6%に対してイリノテカン+シスプラチン併用群11%、下痢は1%に対して8%。
以上の第3相試験の結果より釼持広知氏らは「完全切除後の肺高悪性度神経内分泌がん(HGNEC)に対する術後化学療法としてのイリノテカン+シスプラチン併用療法は、主要評価項目である無再発生存期間(RFS)においてエトポシド+シスプラチン併用療法に対して優越性を示すことができませんでした。以上の結果より、本疾患の標準治療薬は依然としてエトポシド+シスプラチン併用療法になります」と結論を述べている。
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