・EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんが対象の第3相試験「LAURA試験」
・3年経過時点での一次治療継続はタグリッソ投与群で28%、ゲフィチニブまたはエルロチニブ投与群で9%
・タグリッソは中枢神経系疾患の病勢進行または死亡リスクを52%減少
目次
FLAURA試験における全生存期間の最終解析結果
2019年9月28日、英アストラゼネカ社は第3相国際共同FLAURA試験における全生存期間(OS)の最終解析結果を発表した。
本試験は局所進行あるいは転移性EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の患者を対象に、一次治療薬としてオシメルチニブ(商品名:タグリッソ)(以下、タグリッソ)を投与した臨床試験である。
本試験において、タグリッソは従来の標準治療(SoC)であるゲフィチニブまたはエルロチニブとの比較で、主要な副次評価項目であるOSの統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示した(ハザード比 0.799 [95% 信頼区間、0.641-0.997]、p値=0.0462)。
また、タグリッソ投与群ではOS中央値が38.6ヶ月を示したのに対し、対照群では31.8ヶ月であった。また、3年経過した時点で、タグリッソ投与群では28%の患者が一次治療を継続したが、対照群では9%であった。さらにタグリッソ投与群では、中枢神経系疾患(CNS)の病勢進行リスクが52%減少し、CNS転移のある患者の病勢進行または死亡に至るまでの期間において、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある延長を示した。(ハザード比 0.48 [95% 信頼区間0.26-0.86]、p値=0.014)1。
本試験の結果は、スペイン・バルセロナで開催された2019年欧州臨床腫瘍学会(ESMO)のプレジデンシャルシンポジウムで発表された(概要 #LBA5_PR)。
タグリッソの安全性および忍容性は、これまでに行われた試験の安全性プロファイルと同様であり、タグリッソの忍容性は概ね良好。グレード3以上の有害事象(AE)を発現した患者の割合はタグリッソ投与群で42%だったのに対し、対照群では47%であった。なお、タグリッソ投与群に発現した主な有害事象は下痢(60%)、発疹(59%)、爪の障害 (39%)、皮膚の乾燥(38%)、口内炎(29%)、倦怠感(21%)、食欲減退(20%)であった。 タグリッソ投与群の治療期間は対照群の約2倍だったが、グレード3以上の有害事象の発現割合はタグリッソ投与群で42%、対照群で47%、有害事象により治療を中断した割合はタグリッソ投与群で15%、対照群で18%だった。
FLAURA試験は2017年7月に主要評価項目を達成している。この際に、統計学的に有意かつ臨床的に意義のあるPFSの改善を示しており、病勢進行または死亡に至るまでの期間を延長した。
なお、タグリッソは現在、米国、日本、EUを含む78ヶ国で転移性EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんの一次治療薬として承認されている。
肺がんについて
肺がんは、男女共にがんによる死因の第1位であり、すべてのがんによる死亡の約5分の1を占めている。さらには、肺がんによる死亡者数は、乳がん、前立腺がんおよび大腸がんによる死亡者合計を上回る2。肺がんは非小細胞肺がん(NSCLC)と小細胞肺がん(SCLC)に大きく分けられ、肺がん患者の80-85%がNSCLCと診断される3。欧米ではおよそ10-15%、アジアでは30-40%のNSCLC患者がEGFR遺伝子変異を有している4-6 。これらの患者はとくに、がん細胞の成長を促す細胞シグナル伝達経路をブロックするEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)治療への感受性が高くなる。およそ25%のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者は診断時に脳転移を有しており、診断から2年以内にはその割合が40%まで増加する7。そして、生存期間の中央値は脳転移によって8ヶ月未満にまで下がってしまうことがある8。
タグリッソについて
タグリッソは第3世代不可逆的EGFR阻害剤であり、EGFR感受性変異およびEGFR T790M耐性変異の両方を阻害し、中枢神経系転移に対する臨床活性を発揮するよう設計されている。タグリッソ40mg錠および80mg錠の1日1回経口投与は、EGFR遺伝子変異陽性進行NSCLCの1次治療として米国、日本、中国およびEUを含む75ヶ国以上で承認されており、EGFR T790M変異陽性進行NSCLCの2次治療として米国、EU、日本、中国、EUを含む85ヶ国以上で承認されている。また、タグリッソは術後補助療法(ADAURA試験)、切除不能な局所進行(LAURA試験)、転移がんにおける化学療法との併用療法(FLAURA2試験)、ならびにEGFRチロシンキナーゼ阻害剤への耐性に取り組むため他の新薬候補との併用療法(SAVANNAH試験、ORCHARD試験)においても検討が進んでいる。
FLAURA試験について
FLAURA試験は、前治療歴のない局所進行あるいは転移性EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者を対象とし、タグリッソ80mg1日1回経口投与の有効性および安全性を標準治療であるEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(エルロチニブ[150mg1日1回経口投与]あるいはゲフィチニブ[250mg1日1回経口投与])と比較検討した試験を指す。本試験は、二重盲検無作為化試験であり、29ヶ国の556例の患者を対象としている。
出典
1.Vansteenkiste J, et al. CNS Response to Osimertinib vs Standard of Care (SoC) EGFR-TKI as First-line Therapy in Patients (pts) with EGFR-TKI Sensitising Mutation (EGFRm)-positive Advanced Non-Small Cell Lung Cancer (NSCLC): Data from the FLAURA Study. Annals of Oncology. 2017:28(10);189 [Accessed September 2019].
2.World Health Organization. International Agency for Research on Cancer. Globocan Worldwide Fact Sheet 2018. Available at http://globocan.iarc.fr/Pages/fact_sheets_population.aspx [Accessed September 2019].
3.LUNGevity Foundation. Types of Lung Cancer. [Accessed September 2019].
4.Szumera-Ciećkiewicz A, et al. EGFR Mutation Testing on Cytological and Histological Samples in Non-Small Cell Lung Cancer: a Polish, Single Institution Study and Systematic Review of European Incidence. Int J Clin Exp Pathol. 2013:6;2800-12 [Accessed September 2019].
5.Keedy VL, et al. American Society of Clinical Oncology Provisional Clinical Opinion: Epidermal Growth Factor Receptor (EGFR) Mutation Testing for Patients with Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer Considering First-Line EGFR Tyrosine Kinase Inhibitor Therapy. J Clin Oncol. 2011:29;2121-27 [Accessed September 2019].
6.Ellison G, et al. EGFR Mutation Testing in Lung Cancer: a Review of Available Methods and Their Use for Analysis of Tumour Tissue and Cytology Samples. J Clin Pathol. 2013:66;79-89 [Accessed September 2019].
7.Rangachari, et al. Brain Metastases in Patients with EGFR-Mutated or ALK-Rearranged Non-Small-Cell Lung Cancers. Lung Cancer. 2015;88,108–111 [Accessed September 2019].
8.Ali A, et al. Survival of Patients with Non-small-cell Lung Cancer After a Diagnosis of Brain Metastases. Curr Oncol. 2013;20(4):e300-e306 [Accessed September 2019].
参照元:
2019年10月4日発行アストラゼネカ株式会社プレスルーム
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