2020年1月13日(現地時間)、英アストラゼネカ社および米Merck社は、米国食品医薬品局(FDA)が、プラチナ製剤ベースの化学療法とベバシズマブの初回治療で完全または部分奏効を示した進行卵巣がん患者に対する初回治療後の維持療法として、オラパリブ(商品名:リムパーザ、以下 リムパーザ)とベバシズマブの併用療法の追加承認申請を受理するとともに、同剤を優先審査品目に指定したことを発表した。
処方薬ユーザーフィー法に基づく審査期限は、2020年第2四半期を予定されている。
FDAの優先審査指定は、The New England Journal of Medicine誌に掲載された第3相PAOLA-1試験の良好な結果に基づくもの。
同試験では、進行卵巣がん患者を対象に、初回治療後の維持療法として、患者の遺伝子変異等のバイオマーカーの状態および手術の結果を問わず、リムパーザとベバシズマブの併用療法と標準治療であるベバシズマブ単剤療法を比較検討した。
治験担当医師の評価に基づく無増悪生存期間(PFS)において、リムパーザとベバシズマブの併用療法群では病勢進行または死亡のリスクが41%減少(ハザード比0.59に相当)し、PFS中央値はベバシズマブ単剤療法群が16.6カ月であったのに対し、リムパーザとベバシズマブの併用療法群で22.1カ月に延長された。
試験開始から2年経過した時点において病勢進行が認められなかった患者の割合は、ベバシズマブ単剤療法群で28%、リムパーザとベバシズマブ併用療法群では46%であった。
リムパーザとベバシズマブの併用療法群で認められた安全性および忍容性プロファイルはそれぞれの薬剤に関する既知のプロファイルと一致していた。
リムパーザについて
進行卵巣がんの初回治療後の維持療法として、2つの無作為化第3相試験で良好な結果を示した唯一のPARP阻害薬。
また、SOLO-1試験に基づき、BRCA遺伝子変異陽性進行卵巣がんの初回治療後の維持療法として米国で承認された唯一のPARP阻害薬である。
※進行卵巣がんに対するリムパーザとベバシズマブの併用療法は日本国内未承認
PAOLA-1試験について
PAOLA-1試験は、新たにFIGO臨床進行期分類III-IV期の高異型度漿液性または類内膜卵巣がん、卵管がんまたは腹膜がんと診断され、プラチナ製剤ベースの化学療法とベバシズマブによる初回治療により完全または部分奏効を示した患者を対象とし、初回治療後の維持療法としてリムパーザとベバシズマブの併用療法あるいは標準治療であるベバシズマブ単剤療法の有効性および安全性を比較検討した無作為化二重盲検プラセボ対照第3相試験。
同試験の結果、リムパーザとベバシズマブの併用療法群ではPFSの統計学的に有意で臨床的に意義のある延長が認められた。
具体的には、病勢進行または死亡のリスクが41%減少し、PFS中央値はベバシズマブ単剤療法群が16.6カ月であったのに対し、リムパーザとベバシズマブの併用療法群で22.1カ月に延長された(ハザード比0.59に相当)。
盲検下での独立中央判定(BICR)に基づいたPFSによる感度解析の結果は治験担当医師の評価に基づくPFSの結果と一貫しており、ベバシズマブ単剤療法群の中央値が18.3カ月であったのに対し、リムパーザとベバシズマブの併用療法群の中央値は26.1カ月に延長された(ハザード比0.63に相当)。
グレード3以上の有害事象の発現率は、リムパーザとベバシズマブの併用療法群において57%、ベバシズマブ単剤療法群においては51%であった。
発現率が20%以上の主な有害事象は、悪心(53%)、疲労(53%)、高血圧(46%)、貧血(41%)、リンパ球減少(24%)、嘔吐(22%)および関節痛(22%)。グレード3以上の有害事象は高血圧(19%)、貧血(17%)、リンパ球減少(7%)、好中球減少(6%)、疲労(5%)、悪心(2%)、下痢 (2%)、白血球減少 (2%)嘔吐(1%)および腹痛(1%)であった。
リムパーザとベバシズマブ併用療法群で休薬に至った有害事象の発現率は54%、投与中止に至った有害事象の発現率は20%であった。
参照元:
アストラゼネカプレスルーム
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