・低線量CT検査の有無が肺がんによる死亡率に与える影響を比較検証した第3相試験
・肺がん発症率はスクリーニング群で高率で、発見された患者のうち58.6%がステージIA、IBだった
・肺がんを原因とする死亡率はスクリーニング群で24%低率であった
2020年1月29日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて低線量CT検査の有無が肺がんによる死亡率に与える影響を比較検証したNELSON試験(Netherlands Trial Register:NL580)の結果がErasmus MC University Medical CentreのHarry J. de Koning氏らにより公表された。
本試験は、50~74歳の男性13,195人に対して低線量CT検査を実施するスクリーニング群(N=6,583人)、または実施しないコントロール群(N=6,612人)に無作為に振り分け、主要評価項目として肺がんを原因とする死亡率、副次評価項目として肺がん発症率などを比較検証した試験である。
本試験が開始された背景として、全世界における肺がんの死亡率は18.4%を占めており、肺がんは乳がん、大腸がん等に比べて死亡率が高いがんである。他の臨床試験では肺がん患者に対して定期的なCT検査を実施することで死亡率が20%低下する可能性が示唆されている。以上の背景より、本試験が開始された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値はスクリーニング群58歳(55‐63歳)に対してコントロール群58歳(54‐63歳)。現在の喫煙ステータスはスクリーニング群で吸っている人55.5%、吸っていない人44.5%に対して、吸っている人54.8%、吸っていない人45.2%。
喫煙期間はスクリーニング群で25年以下0.4%、26‐30年10.0%、31‐35年25.2%、36‐40年30.9%、41‐45年22.1%、45年以上11.4%に対してコントロール群で25年以下0.3%、26‐30年10.9%、31‐35年25.8%、36‐40年31.9%、41‐45年20.0%、45年以上11.1%。以上のように、喫煙期間を除いて両群間の患者背景に大きな偏りはなかった。
以上の背景を有する患者に対する本試験のフォローアップ期間10年時点における結果は下記の通りである。肺がん発症率はスクリーニング群5.58/10,000人に対してコントロール群4.91/10,000人を示し、スクリーニング群で肺がん発症率が高率(RR:1.14,95%信頼区間:0.97‐1.33)であった。
そして、スクリーニング群では肺がんを発症した59.0%の患者がCT検査により発見されており、発見された患者の内58.6%がステージIA、IBの進行ステージで発見されていた。なお、スクリーニング群のCT検査以外、またはコントロール群でステージIA、IBの段階で発見された患者割合はそれぞれ14.2%、13.5%を示した。
主要評価項目である肺がんを原因とする死亡率はスクリーニング群2.50/10,000人に対してコントロール群3.30/10,000人を示し、スクリーニング群で肺がん死亡率が24%(RR:0.76,95%信頼区間:0.61‐0.94,P=0.01)低率であった。
以上のNELSON試験の結果よりHarry J. de Koning氏らは以下のように結論を述べている。”低線量CT検査を受けた人は、低線量CT検査を受けていない人に比べて肺がんによる死亡率は低下しました。”
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