2020年3月25日、小野薬品工業株式会社(以下、小野薬品)は、ブルトン型チロシンキナーゼ(以下、BTK)阻害剤であるチラブルチニブ塩酸塩(商品名:ベレキシブル錠80mg)(以下、ベレキシブル)について、再発又は難治性の中枢神経系原発リンパ腫」の効能又は効果で国内製造販売承認を取得したことを発表した。
今回の承認は、再発又は難治性の中枢神経系原発リンパ腫(PCNSL)患者44例を対象にベレキシブルを1日1回、経口投与による有効性および安全性を評価する多施設共同非盲検非対照第1/2相試験(ONO-4059-02)の結果に基づいている。
今回、承認された用法及び用量である480mg(空腹時)が投与された17例において、主要評価項目である中央判定による全奏効率(ORR)は52.9%(9/17例)であった。
主なグレード3~4の副作用は、好中球減少、白血球減少および高トリグリセリド血症で、各々11.8%(2/17例)に認められた。
この承認により、ベレキシブルは、標準治療が確立していない再発又は難治性のPCNSL患者の治療薬として世界で初めて承認されたBTK阻害剤となる。
小野薬品は、2019年11月27日に「原発性マクログロブリン血症及びリンパ形質細胞リンパ腫」に対する効能又は効果に係る申請も行っている。
目次
中枢神経系原発リンパ腫(PCNSL)について
PCNSLは、初発時に病変が脳脊髄(眼を含む)に局在する悪性リンパ腫であり、日本におけるPCNSLの年間発症数は約980人と推定1、2されている。
PCNSL患者が呈する徴候および症状は病変部位により異なり、局所神経障害、神経精神症状、頭蓋内圧上昇に関連する症状、発作、眼症状、頭痛、運動困難、脳ニューロパチー、神経根障害などがある。
現在、未治療PCNSL患者には高用量メトトレキサート療法を基盤とする薬物療法およびその後の全脳放射線療法が行われており、一部の患者集団で長期寛解するものの、多くの患者は再発に至る。
また、薬物療法が奏効しない難治性患者も存在する。
再発又は難治性のPCNSL患者に対しては標準治療が確立されておらず、治療選択肢は限定的であり、新たな治療薬が望まれている3。
出典元
1:Neurol Med Chir (Tokyo). 2017;57(Supplement 1):9-102.
2:Jpn J Neurosurg VOL.24 NO.10 2015.10
3:脳腫瘍診療ガイドライン 2019年版
ONO-4059-02試験について
本試験は、再発又は難治性のPCNSL患者を対象に、チラブルチニブ塩酸塩単剤投与の有効性および安全性を検討した多施設共同非盲検非対照第1/2相試験。
本試験では、患者44例が登録され、チラブルチニブ塩酸塩320mg(20例)、480mg(7例)および480mg空腹時(17例)が、いずれも1日1回の経口投与を受け、病勢進行または許容できない毒性が認められるまで投与が継続された。
ベレキシブルについて
ベレキシブルは、小野薬品が創製した選択性の高い経口BTK阻害剤であり、国内においてB細胞腫瘍患者および自己免疫疾患患者を対象に開発を進めている。
B細胞受容体(以下、BCR)シグナル伝達は、B細胞系リンパ球細胞の生存、活性化、増殖、成熟および分化に関する中心的役割を担っており、特にB細胞性非ホジキンリンパ腫(B-NHL)および慢性リンパ性白血病(CLL)では、BCRシグナル伝達経路が恒常的に活性化していることが知られている。
ベレキシブルはBCRの下流に位置するメディエーターであるBTKを阻害することから治療効果が期待される。
小野薬品は、2014年12月に、日本、韓国、台湾、中国およびASEAN諸国以外の全世界におけるチラブルチニブ塩酸塩の開発・販売権を米国Gilead Sciences,Inc.に供与するライセンス(導出)契約を締結した。
参照元:
小野薬品工業株式会社ニュースリリース
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