・再発難治性/転移性トリプルネガティブ乳がん患者が対象の第3相試験
・サシツズマブ ゴビテカン単剤療法の有効性・安全性を化学療法と比較検証
・無増悪生存期間は5.6ヶ月、全生存期間は12.1ヶ月でともに化学療法に対して延長認めた
2021年4月22日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて再発難治性/転移性トリプルネガティブ乳がん患者に対する抗Trop-2抗体薬物複合体であるサシツズマブ ゴビテカン(Sacituzumab Govitecan)単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のASCENT試験(NCT02574455)の結果がMassachusetts General HospitalのAditya Bardia氏らにより公表された。
ASCENT試験とは、脳転移のない再発難治性/転移性トリプルネガティブ乳がん患者(N=468人)に対して21日を1サイクルとして1、8日目にサシツズマブ ゴビテカン10mg/kg単剤療法を投与する群(N=235人)、または主治医選択の化学療法(カペシタビン、エリブリン、ビノレルビン、ゲムシタビン)を投与する群(N=233人)に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)などを比較検証したランダム化第3相試験である。
本試験が開始された背景として、転移性トリプルネガティブ乳がんの予後は不良である。Trop-2は乳がんで高発現しているため、抗Trop-2抗体薬物複合体であるサシツズマブ ゴビテカンの有用性は期待できる。以上の背景より、本試験が開始された。
本試験の結果、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はサシツズマブ ゴビテカン単剤群5.6ヶ月(95%信頼区間:4.3ヶ月-6.3ヶ月)に対して主治医選択の化学療法群1.7ヶ月(95%信頼区間:1.5ヶ月-2.6ヶ月)、主治医選択の化学療法群に比べてサシツズマブ ゴビテカン単剤群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを59%減少(HR:0.41、95%信頼区間:0.32-0.52、P<0.001)した。
副次評価項目である全生存期間(OS)中央値はサシツズマブ ゴビテカン単剤群12.1ヶ月(95%信頼区間:10.7ヶ月-14.0ヶ月)に対して主治医選択の化学療法群6.7ヶ月(95%信頼区間:5.8ヶ月-7.7ヶ月)、主治医選択の化学療法群に比べてサシツズマブ ゴビテカン単剤群で死亡(OS)のリスクを52%減少(HR:0.48、95%信頼区間:0.38-0.59、P<0.001)した。客観的奏効率(ORR)はサシツズマブ ゴビテカン単剤群35%に対して主治医選択の化学療法群5%を示している。
一方の安全性として、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。好中球減少症はサシツズマブ ゴビテカン単剤群51%に対して主治医選択の化学療法群33%、白血球減少症はサシツズマブ ゴビテカン単剤群10%に対して主治医選択の化学療法群5%、下痢はサシツズマブ ゴビテカン単剤群10%に対して主治医選択の化学療法群1%未満、貧血はサシツズマブ ゴビテカン単剤群8%に対して主治医選択の化学療法群5%、発熱性好中球減少症はサシツズマブ ゴビテカン単剤群6%に対して主治医選択の化学療法群2%であった。
以上のASCENT試験の結果よりAditya Bardia氏らは「再発難治性/転移性トリプルネガティブ乳がん患者に対する抗Trop-2抗体薬物複合体サシツズマブ ゴビテカン単剤療法は、主治医選択の化学療法に比べて全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善しました。安全性に関しては、骨髄抑制、下痢の発症率がサシツズマブ ゴビテカン単剤群で高率でした」と結論を述べている。
乳がんの治験・臨床試験広告
この記事に利益相反はありません。