近畿大学は5月27日、肝機能不良の進行肝細胞がん患者に対する免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ(一般名:ニボルマブ)」の有効性は肝機能良好の患者と同等であり、かつ安全性にも問題がないことを、国際多施設共同試験により世界で初めて証明したと発表した。
この成果は、同大医学部内科学教室消化器内科部門主任教授の工藤正俊氏を中心とする国際共同研究チームによるもの。同研究の論文は、医学専門誌「Journal of Hepatology」に2021年5月27日付でオンライン掲載された。
現在、肝細胞がんは世界で5種類の分子標的薬(レンバチニブ、ソラフェニブ、レゴラフェニブ、カボザンチニブ、ラムシルマブ)と4種類の免疫療法薬(アテゾリズマブ+ベバシズマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ+イピリムマブ)の合計9種類が承認を得ている(日本国内では、うち6種類が承認済み)。しかし、9種類の薬剤は肝機能不良の進行肝細胞がん患者には使用が認められていないため、肝機能不良の進行肝細胞がん患者に対する全身化学療法は、大きな臨床的問題点となっている。
この問題を解決すべく、今回の国際共同試験では、進行肝細胞がん患者(Child-Pugh分類2B)の中でも比較的肝機能の低下した49症例(ソラフェニブ治療歴有り:24例、ソラフェニブ投与歴なし:25例)に対してオプジーボを投与。その結果、客観的奏効率(ORR)12%、病勢制御率(DCR)55%、奏効までの期間2.7カ月、奏効持続期間9.9カ月を示し、治療関連の重篤な有害事象(グレード3/4)の出現率は24%だった。
この成績は、既に報告された肝機能良好の患者(Child-Pugh分類A)の262例に対するオプジーボの成績(El-Khoueiry AB, Kudo M, et al. Lancet 2017;389:2492–2502.)と比較するとほぼ同等だという(Child-Pugh分類Aの客観的奏効率(ORR)20%、病勢制御率(DCR)61%、奏効までの期間2.7カ月、奏効持続期間12.4カ月、重篤な有害事象(Grade 3/4)出現率23%)。
また、客観的奏効の得られた進行肝細胞がん患者(Child-Pugh分類B)6例のうちの4例は、肝機能が良好であるChild-Pugh分類Aに改善。進行肝細胞がん患者(Child-Pugh分類B)の全生存期間(OS)は7.6カ月(ソラフェニブ治療歴有り:7.4カ月、ソラフェニブ投与歴なし:9.6カ月)だった。これは、実臨床の観察研究で、非介入試験である「GIDEON」におけるソラフェニブによる進行肝細胞がん患者(Child-Pugh分類B)の全生存期間(OS)の5.2カ月を凌駕し、通常診療でのソラフェニブの全生存期間(OS)の3~5カ月を上回る成績としている。
これらの結果から、肝機能が低下した進行肝細胞がん患者(Child-Pugh分類B)に対するオプジーボの有効性・安全性は、肝機能良好の患者(Child-Pugh分類A)の262例とほぼ同等であることが実証された。研究グループはニュースリリースにて、「今後、ニボルマブ(オプジーボ)が肝機能不良の進行肝細胞がん患者の新たな治療法となることが期待されます」と述べている。
参照元:
近畿大学 ニュースリリース
肝臓がんの治験・臨床試験広告
リサーチのお願い
この記事に利益相反はありません。