6月14日、ノバルティスファーマ株式会社は、再発/難治性濾胞性リンパ腫患者を対象にCAR-T細胞療法であるキムリア(一般名:チサゲンレクルユーセル、以下キムリア)の有効性と安全性を評価した第2相ELARA試験の主解析の結果を発表した。
濾胞性リンパ腫は、リンパ腫の中でも低悪性度の疾患であり、非ホジキンリンパ腫(NHL)の中では2番目に多い。濾胞性リンパ腫は、再発を繰り返す治癒不能の悪性腫瘍と考えられており、新たな治療法が登場しているものの、再発性の濾胞性リンパ腫患者は中央値で5ラインの前治療を受ける可能性があり、中には12ライン受ける症例もあり、治療抵抗性や早期再発の症例では治療選択肢が尽きてしまう場合がある。
ELARA試験は、再発/難治性濾胞性リンパ腫患者(N=97人)を対象にキムリアを投与した単一群、非盲検のピボタル臨床試験。主要評価項目は、中央判定による最良総合効果に基づく完全奏効率(CRR)、副次評価項目は、全奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)および安全性とした。
有効性評価の対象とされた94人の追跡調査期間中央値は11ヶ月における結果は、主要評価項目である完全奏効率(CRR)は66%(95%信頼区間:56~75%)であり、全奏効率(ORR)は86%(95%信頼区間:78~92%)であった。また、6ヵ月時点の完全奏効例における奏効維持率は94%(95%信頼区間:82~98%)で、6ヵ月時点の無増悪生存率(PFS)は76%(95%信頼区間:65~84%)を示した。なお、今回の解析には、前治療歴が多数あり、複数の前治療を受けたにもかかわらず再発を繰り返すか難治性となった高リスクの患者も含まれている。
一方、安全性として、CAR-T療法に関連する主な副作用であるサイトカイン放出症候群(CRS)のグレード3/4を認めた患者はいなかった。グレード1/2のCRSを認めた患者は49%であった。投与後8週間以内にグレード3以上の有害事象を発現した患者は65%であり、主な内訳は好中球減少症(28%)および貧血(13%)であった。
ペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院教授でアブラムソンがんセンターのリンパ腫プログラム責任者であるStephen J Schuster氏は「研究者としての我々の目標はCAR-T療法の可能性を探求し続けることであり、優れたELARAの安全性および有効性の知見は、キムリアが再発または難治性の濾胞性リンパ腫の三次治療において重要な役割を果たす可能性があることを示唆しています」と述べている。
なお、この結果は、6月7日に2021年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次バーチャル科学会議で発表された。
キムリアとは
キムリアとは患者自身の免疫を用いて1回の投与で治療を可能にする免疫細胞療法であり、米国食品医薬品局(FDA)の承認を世界で初めて受けたCAR-T療法の治療製品。再発/難治性の小児および若年成人の急性リンパ芽球白血病(ALL)と再発/難治性の成人びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の適応を受けている。国内においても再発/難治性のCD19陽性B細胞性ALLと再発/難治性のDLBCLを適応症として承認を取得している。
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