・治療歴のあるRAS野生型転移性大腸がん患者が対象の第2相試験
・アービタックス再投与+バベンチオ併用療法の有効性・安全性を検証
・全生存期間11.6ヶ月、無増悪生存期間3.6ヶ月を示した
2021年8月12日、医学誌『JAMA Oncology』にて治療歴のあるRAS野生型転移性大腸がん患者に対する抗EGFR抗体薬であるアービタックス(一般名:セツキシマブ、以下アービタックス)再投与+抗PD-L1抗体薬であるバベンチオ(一般名:アベルマブ、以下バベンチオ)併用療法の有効性、安全性を検証した第2相のCAVE試験(NCT04561336)の結果がUniversità degli Studi della CampaniaのErika Martinelli氏らにより公表された。
CAVE試験は、一次治療として抗EGFR抗体薬+化学療法により完全奏効(CR)、部分奏効(PR)を達成し、二次治療後に病勢進行したRAS野生型転移性大腸がん患者(N=77人)に対して1週に1回アービタックス250mg/m2(1サイクル目は400mg/m2)+2週を1サイクルとしてバベンチオ10mg/kgを投与し、主要評価項目として全生存期間(OS)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)、安全性を検証したシングルアームの第2相試験である。
本試験が開始された背景として、ファーストライン治療として抗EGFR抗体薬を含む併用療法に対して反応性を示したRAS野生型転移性大腸がん患者に対しては抗EGFR抗体薬の再投与が有効である可能性が示唆されている。以上の背景より、治療歴のあるRAS野生型転移性大腸がん患者に対する抗EGFR抗体薬アービタックス再投与+抗PD-L1抗体薬バベンチオ併用療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験に登録された患者の性別は男性が42人、女性が35人。年齢中央値は63歳。マイクロサテライト安定性(MSS)71人、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)3人、不明3人。以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。
主要評価項目である全生存期間(OS)中央値は11.6ヶ月(95%信頼区間:8.4~14.8ヶ月)を示し、主要評価項目達成基準を満たした。副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は3.6ヶ月(95%信頼区間:3.2~4.1ヶ月)を示した。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3の有害事象(AE)は皮膚の発疹14%(N=11人)、下痢4%(N=3人)であった。
また、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)判定によりRAS/BRAFステータス別の全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)は下記の通りである。全生存期間(OS)中央値はRAS/BRAF野生型群の17.3ヶ月(95%信頼区間:12.5~22.0ヶ月)に対してRAS/BRAF変異型群で10.4ヶ月(95%信頼区間:7.2~13.6ヶ月)と、RAS/BRAF野生型群で死亡(OS)のリスクを51%(HR:0.49、95%信頼区間:0.27~0.90、P=0.02)減少した。
無増悪生存期間(PFS)中央値はRAS/BRAF野生型群の4.1ヶ月(95%信頼区間:2.9~5.2ヶ月)に対してRAS/BRAF変異型群で3.0ヶ月(95%信頼区間:2.6~3.5ヶ月)と、RAS/BRAF野生型群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを58%(HR:0.42、95%信頼区間:0.23~0.75、P=0.004)減少した。
以上のCAVE試験の結果よりErika Martinelli氏らは「治療歴のあるRAS野生型転移性大腸がん患者に対する抗EGFR抗体薬アービタックス再投与+抗PD-L1抗体薬バベンチオは主要評価項目である全生存期間(OS)を改善しました。また、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)判定で投与患者のセレクションを実施することで高い臨床的ベネフィットを提供できる可能性が示唆されました」と結論を述べている。
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