・ホルモン受容体陽性HER2陰性の進行性乳がん患者が対象の第2相試験
・イブランス+フルベストラント併用療法の有効性・安全性をイブランス+レトロゾール併用療法と比較検証
・無増悪生存期間は+フルベストラントの27.9ヶ月に対して+レトロゾールで32.8ヶ月と、統計学的に有意な差は確認されず
2021年10月7日、医学誌『JAMA Oncology』にてホルモン受容体陽性HER2陰性の進行性乳がん患者に対するファーストライン治療としてCDK4/CDK6選択的阻害薬であるイブランス(一般名:パルボシクリブ、以下イブランス)+フルベストラントもしくはレトロゾール併用療法の有効性、安全性を比較検証した第2相試験(NCT02491983)の結果がHospital Arnau de VilanovaのAntonio Llombart-Cussac氏らにより公表された。
本試験は、ホルモン受容体陽性HER2陰性の進行性乳がん患者(N=486人)に対して、ファーストライン治療としてイブランス+フルベストラント併用療法を投与する群(N=243人)、もしくはイブランス+レトロゾール併用療法を投与する群(N=243人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として治験医師判断の無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)、全生存期間(OS)などを比較検証した第2相試験である。
本試験が開始された背景として、ホルモン受容体陽性HER2陰性の進行性乳がん患者に対するファーストライン治療として、CDK4/CDK6選択的阻害薬の併用療法はフルベストラントもしくはレトロゾールのどちらの方が有用性が高いのかを検証する目的で開始された。
本試験に登録された486人の患者背景は下記の通りである。年齢中央値は63歳(25~90歳)。人種は白人94.9%、アジア人0.6%、黒人0.8%、不明3.7%。以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。
主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はイブランス+フルベストラント併用群の27.9ヶ月(95%信頼区間:24.2~33.1ヶ月)に対してイブランス+レトロゾール併用群で32.8ヶ月(95%信頼区間:25.8~35.9ヶ月)と、イブランス+フルベストラント併用群で病勢進行または死亡のリスクを13%増加(HR:1.13、95%信頼区間:0.89-1.45、P=0.32)を示した。
副次評価項目である客観的奏効率(ORR)はイブランス+フルベストラント併用群の46.5%に対してイブランス+レトロゾール併用群で50.2%であり、両群間で統計学的有意な差は確認されなかった。3年全生存率(OS)はイブランス+フルベストラント併用群の79.4%に対してイブランス+レトロゾール併用群で77.1%であった。
以上の第2相試験の結果よりAntonio Llombart-Cussac氏らは「ホルモン受容体陽性HER2陰性の進行性乳がん患者に対するファーストライン治療としてCDK4/CDK6選択的阻害薬イブランス+フルベストラント併用療法は、イブランス+レトロゾール併用療法に対する無増悪生存期間(PFS)の改善効果の優越性を示すことができませんでした」と結論を述べている。
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