・プラチナ製剤感受性再発卵巣がん患者が対象の第3相試験
・リムパーザ+Cediranib併用療法、リムパーザ単剤療法の有効性・安全性を化学療法と比較検証
・無増悪生存期間はリムパーザ+Cediranib併用療法群で10.4ヶ月、リムパーザ単剤療法群で8.2ヶ月であり、
化学療法群(10.3ヶ月)に対して有意差を認めず
2022年3月15日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にてプラチナ製剤感受性再発卵巣がん患者に対するPARP阻害薬であるリムパーザ(一般名:オラパリブ、以下リムパーザ)+経口VEGF阻害薬であるCediranib併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のNRG-GY004試験(NCT02446600)の結果がDana-Farber Cancer InstituteのJoyce F. Liu氏らにより公表された。
NRG-GY004試験は、プラチナ製剤感受性再発卵巣がん患者(N=565人)に対してプラチナ系抗がん剤ベースの化学療法を実施する群、リムパーザ単剤療法を実施する群、もしくはリムパーザ+Cediranib併用療法を実施する群に無作為に1対1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として全患者群における無増悪生存期間(PFS)を比較検証したオープンラベルランダム化の第3相試験である。
本試験が開始された背景として、プラチナ製剤感受性再発卵巣がん患者に対する標準治療はプラチナ系抗がん剤ベースの化学療法である。しかしながら、プラチナ系抗がん剤ベースの化学療法により合併症などを発症する。以上の背景より、経口薬レジメンのリムパーザ単剤療法、リムパーザ+Cediranib併用療法の有用性を比較検証する目的で本試験が開始された。
本試験の結果、主要評価項目である全患者群における無増悪生存期間(PFS)中央値は、プラチナ系抗がん剤ベースの化学療法群で10.3ヶ月(95%信頼区間:8.7-11.1ヶ月)、リムパーザ単剤療法群で8.2ヶ月(95%信頼区間:6.6-8.7ヶ月)、リムパーザ+Cediranib併用療法群で10.4ヶ月(95%信頼区間:8.5-12.5ヶ月)をそれぞれ示した。リムパーザ+Cediranib併用療法は、プラチナ系抗がん剤ベースの化学療法群に対して病勢進行または死亡(PFS)のリスクを14%減少(HR:0.86、95%信頼区間:0.66-1.10、P=0.077)したが、統計学的有意な差は確認されなかった。
BRCA遺伝子生殖細胞系列変異陽性群において、プラチナ系抗がん剤ベースの化学療法群に対して、リムパーザ+Cediranib併用療法は病勢進行または死亡(PFS)のリスクを45%減少(HR:0.55、95%信頼区間:0.32-0.94)し、リムパーザ単剤療法は病勢進行または死亡(PFS)のリスクを37%減少(HR:0.63、95%信頼区間:0.37-1.07)した。
一方、BRCA遺伝子生殖細胞系列変異陰性群では、プラチナ系抗がん剤ベースの化学療法群に対して、リムパーザ+Cediranib併用療法は病勢進行または死亡(PFS)のリスクを3%減少(HR:0.97、95%信頼区間:0.73-1.30)、リムパーザ単剤療法は病勢進行または死亡(PFS)のリスクを41%増加(HR:1.41、95%信頼区間:1.07-1.86)した。
安全性は、リムパーザ+Cediranib併用療法、リムパーザ単剤療法に比べて化学療法群で血液関連有害事象(AE)が多く発現し、非血液関連有害事象(AE)はリムパーザ+Cediranib併用療法で多く発現が確認された。
以上のNRG-GY004試験の結果よりJoyce F. Liu氏らは「プラチナ製剤感受性再発卵巣がん患者に対するPARP阻害薬リムパーザ単剤療法、リムパーザ+経口VEGF阻害薬Cediranib併用療法は、プラチナ系抗がん剤ベースの化学療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善しませんでした。しかしながら、BRCA遺伝子生殖細胞系列変異陽性群では臨床的意義のある無増悪生存期間(PFS)の改善が確認されました」と結論を述べている。
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